はじめに:干渉波の影響で通信トラブル発生!?
携帯電話/防災無線・公共施設(空港/鉄道/道路など)・商業施設・工場/オフィスなど、日常でさまざまな無線サービスが利用されています。通信トラブルの要因の一つが『干渉波』による混信や妨害ですが、その報告件数は年間200件ほどあるそうです。
特に政府機関・公共機関など安心/安全に関わる無線サービスでは、通信トラブル発生時には早期解決が望まれます。また干渉波の調査は、基地局/送信局などを設置する際の事前確認でも実施されています。

無線サービスの利用シーン(イメージ)
干渉波による通信トラブルの解決へ、
3つのステップ『Step1/2/3』
干渉波による通信トラブルを解決するためには、その発生源を突き止める必要がありますが、これは容易ではありません。
ここでは、干渉波の発生源を突き止めて対策するための、3つのステップを紹介します。
Step1 干渉波把握
通信トラブルの要因として『干渉波』が懸念される場合、はじめに実際に妨害の要因になる『干渉波』が発生していることを確認します。
干渉波が発生している場合、頻度/周波数/信号強度など状況も把握することが重要です。
その方法として、2つのケースが想定されます。
(A)広範囲、長期間(数日-数ヵ月)、定点観測するケース。
⇒ リモートスペクトラムモニタ(設置型・遠隔モニタ)
(B)限定範囲、短期間(数時間)、移動観測するケース。
⇒ フィールドマスタプロ(可搬型・直接評価)
(A)長期間かつ遠隔地の連続監視/記録: リモートスペクトラムモニタ
- ネットワーク経由で遠隔地から制御/測定/保存
- 長期間監視。任意のスケジュールで記録
(B)短期間かつ現場付近で直接観測:フィールドマスタプロ
- リアルタイム解析により、掃引型スペクトラムアナライザでは捉えきれない瞬間的/バースト的な信号も測定可能
- スペクトラム密度表示により、搬送波に埋もれた干渉波も表示して認識
フィールドマスタ プロ MS2090AのRTSAとIQキャプチャの具体的活用例
断続的な干渉信号を捕捉する方法:MS2090A
「SAVE ON EVENT」機能の使い方(日本語字幕)
Step2 発生エリア推定
Step1で干渉波が発生していることがわかったら、次に周辺の電波を計測して干渉波の発生エリアを少し絞ります。
その方法として、2つのケースがあります。
マッピング法
3点観測法
マッピング法
マッピング法は、干渉波が発生しているエリアを調べる環境調査に有効です。
GPSやトラッキングの位置情報に基づき、屋外/屋内のマップ上に干渉波の信号強度を色付のドットでプロットします。
信号強度が強いと赤く表示されるので、赤いドットが多いエリアに発生源があると推測できます。
信号強度は『チャネルパワー機能』を利用しているので、信号帯域全体の信号強度で評価できます。
屋外
- 車両に測定器と全方向アンテナを搭載して広範囲マッピング
- 測定器のGPS機能により緯度/経度の情報を取得
屋内


- GPSの届かない屋内でも各種センサにより位置情報を把握(Trackingユニット)
- 屋外と屋内の測定データを統合表示、3D表示、階段/フロアの分析も可能
屋内・屋外無線カバレッジマッピング MS2090A
NEON MA8100A: 高速チャネルスキャン(日本語字幕)
屋内マッピングシステム
NEON Signal Mapper MA8100A
3点観測法
複数(例:3箇所)の測定地点から干渉波の信号強度と方位を観測することで発生エリアを推定します。

インターフェアレンスハンター MA2700Aとフィールドマスタプロ MS2090A

3箇所から干渉波の発生エリアを推定(別途地図に記入するイメージ)
インターフェアレンスハンターMA2700Aには、電子コンパス(方位)が内蔵されています。
MS2090Aと連動させることで、計測地点の緯度経度と干渉波の方位をマップに表示しながら計測できます。
※屋外/屋内のマップは、計測する前にMS2090A本体にダウンロードしておきます。
- インターフェアレンスハンターに内蔵されたコンパスの方位角情報と連動してMS2090AのMap画面にアンテナの向きを表示
- インターフェアレンスハンターのハンドルにあるトリガボタンを押すことで、アンテナの方角をマップに記録(赤いライン)
インターフェアレンス・ハンター MA2700A(妨害波方向探知アンテナシステム)

Polar 画面

Map 画面
インターフェアレンスファインダー MS2090A Map画面 測定例
方向探知には『Polar画面』と『Map画面』の2種類の表示があります。
- Polar画面:現在地(計測地点)を中心として360°周囲の干渉波の信号の強弱を画面に記録
- Map画面:干渉波の信号強度が強い方位でトリガボタンを押すことで、その方位を画面に記録
Step3 発生源特定
Step2で干渉波の発生エリアを推定したら、Step3では指向性アンテナを用いて発生源を突き止めます。
可搬型の測定器なので、徒歩で持ち歩きながら屋外/屋内の探索ができます。
また、干渉波の周波数/帯域幅を指定しておくと、信号の強弱に合わせて音のピッチ/音量を変えて知らせます。画面の波形や数値を目で追いかけなくても、音の強弱で干渉波の方向を理解できます。
フィールドマスタ プロ MS2090A
干渉波探索機能のデモ(日本語字幕)
可搬型スペクトラムアナライザ:
フィールドマスタプロ MS2090A 概要
フィールドマスタ プロ MS2090Aは、FFT解析によるリアルタイム表示に対応したスペクトラムアナライザです。
MS2090Aは上限周波数54 GHzまでラインナップしておりますので、セルラ(5G/LTE)、ワイヤレスバックホール、航空、防衛、宇宙/衛星システム、レーダーなど多様な無線システムでご利用いただけます。
規格(一部オプション必要)
- 周波数範囲:9 kHz~9/14/20/26.5/32/43.5/54 GHz
- 解析帯域幅:22 MHz、55 MHz、110 MHz
- 復調:5GNR、LTE FDD、RF、および変調品質とSSB信号解析
- IQキャプチャ/ストリーミング
リアルタイムスペクトラムアナライザ(RTSA)は、無線通信の干渉波を捉える際に有効です。
一般的な掃引型スペクトラムアナライザでは捉えることができない、瞬間的・突発的な信号を観測できます。
特に、パワースペクトラム密度では、画面に出現する信号の頻度を色で表現します。(時間的密度)
これにより、搬送波の中に隠れている干渉信号を見つけることも可能になります。
信号をキャプチャ(記録)してIQデータを解析:(MX280005A)
高度化/過密化する無線システムでは、非意図的信号や不正信号を原因とする干渉波によって無線システムの運用に影響を及ぼすリスクがあります。このようなトラブルの解決策としてスペクトラム帯域内で競合する無線信号をキャプチャ(記録)して解析したいというケースもあります。MS2090Aでは、無線信号をIQデータとしてキャプチャしてからソフトウェアで解析できます。

IQ Signal Master ベクトル信号解析ソフトウェア
MX280005A 解析画面例
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