アンリツ株式会社(社長 橋本 裕一)は、ベクトルネットワークアナライザMS4640Aシリーズの後継機種としてMS4640Bシリーズを開発。9月24日から販売を開始します。
今回開発したMS4640Bシリーズは、「パルス内位相測定機能」および「真の差動測定機能」をオプションで提供しています。パルス内位相[※1]測定オプションを使用することにより、レーダー通信システム用デバイスの解析が行えます。また、真の差動測定オプションを使用することにより、高速無線通信システムで使用される差動デバイス[※2]の非線形領域[※3]での特性評価が行えます。
ベクトルネットワークアナライザは、主にレーダーや無線通信で使用される各種デバイスの周波数特性を評価する計測器ですが、近年は用途が拡大し、顧客ニーズが多様化しています。
アンリツは今回、こうした市場動向への対応を図り、従来から販売していたMS4640Aシリーズの後継機種となるMS4640Bシリーズを開発。レーダー用デバイスのパルス変調解析、差動デバイスの特性評価を可能としました。
アンリツは、MS4640Bシリーズの販売を開始することで、レーダー通信システムや各種高速無線通信システムの品質向上に貢献いたします。
[開発の背景]
ベクトルネットワークアナライザは、レーダー通信システムや各種無線通信システム用デバイスの周波数特性を評価する計測器として幅広く利用されています。
こうした中、レーダー用デバイスでは、信号解析の品質向上のために、実際のパルス変調時の特性を評価ことが望まれています。また、高速無線通信システムにおいては、信号品質を改善するためにデバイスを差動状態で動作させていることから、2つの試験信号を同時にデバイスに入力して特性を評価するTrue Balance(真の差動)測定が必要とされるなど、ネットワークアナライザの用途が拡大しています。
そこでアンリツは、従来から提供していたMS4640Aシリーズの測定機能拡充を図り、新たにMS4640Bシリーズを開発しました。MS4640Bシリーズは、周波数特性評価に加え、オプションで、レーダー用デバイスの変調解析を可能とする「パルス内位相測定機能」および差動デバイスに対応できる「真の差動測定機能」を利用でき、レーダー通信システムや各種高速無線通信システムの品質向上に貢献いたします。
[製品概要]
ベクトルネットワークアナライザMS4640Bシリーズは、レーダー通信システムや各種無線通信システム用デバイスの開発・製造用計測器です。
MS4640Bシリーズは、動作周波数範囲により、4つのモデル(MS4642B:10 MHz[※4]~20 GHz[※5]、MS4644B:10 MHz~40 GHz、MS4645B:10 MHz~50 GHz、 MS4647B:10 MHz~70 GHz)から構成されます。
従来機種のMS4640Aシリーズで高く評価されていた業界最高レベルの測定速度(20マイクロ秒/点)やダイナミックレンジ[※6](100 dB@70 GHz)を実現するとともに、高機能化を図り、レーダー用デバイス向けのパルス内位相測定や高速無線通信システム用デバイス向けの真の差動測定などの機能を提供しています。各測定機能はオプション化しており、用途に応じて選択できます。
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[主な特長]
■レーダー用デバイスの変調解析が可能
レーダー用デバイスは変調[※7]信号が利用されていることから、試験信号においても変調信号を用いることが望まれています。MS4640Bシリーズに「パルス内位相機能」を搭載することにより試験信号を変調できます。これにより、実際のパルス変調時の特性を解析できます。
■高速無線通信システム用差動デバイスの特性評価が可能
高速無線通信システムでは、信号品質を保持するためにデバイスを差動状態で動作させています。このため、差動デバイスの評価では2つの試験信号が必要です。MS4640Bシリーズに「真の差動測定機能」を搭載することにより、2つの試験信号を同時に入力でき、差動デバイスの評価が行えます。
■マイクロ波・ミリ波アクティブデバイスの雑音指数測定が可能
MS4640Bシリーズは、MS4640Aシリーズのオプションである雑音指数測定機能を利用できます。本オプションを搭載することにより、次世代高速無線通信システムや航空・宇宙レーダー、車載レーダー、電波天文学用レーダーなどさまざまな通信システムで使用されているマイクロ波・ミリ波アクティブデバイス[※8]に含まれる雑音量が測定できます。
■柔軟性のあるアップグレード
MS4640Bシリーズは、周波数の拡張や必要なオプションを後付けできるプラットフォームを採用しています。これにより、標準モデルから必要に応じてオプションの追加や周波数の拡張が可能であり、70 kHz~110 GHzまでの同軸[※9]測定、750 GHzまでの導波管[※10]測定が行えます。
[対象市場・用途]
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対象市場
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デバイスメーカー
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用途
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レーダーシステム用デバイス、高速無線通信システム用差動デバイス、マイクロ波・ミリ波用アクティブデバイスの評価
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[ ※用語解説]
[※1] パルス内位相
パルス変調のかかった信号で、パルスがオン時で指定された位置の位相を測定すること。
[※2] 差動デバイス
差動デバイスとは1対(ペア)の信号線を利用したデバイス。ペア間の信号の位相を180度反転させることにより、雑音に対して強い耐性があり、携帯端末内や高速の有線データ通信で多数利用されている。
[※3] 非線形領域
信号の入力レベルに対して出力レベルが想定よりも小さくなる領域。非線形領域では、信号の歪みが発生する。
[※4] MHz:メガヘルツ
周波数の単位。1ヘルツは、1秒間に1回周波数が振動することを差すことから、メガヘルツは、1秒間に100万回振動する。
[※5] GHz
MHz同様、周波数の単位であり、1秒間に10億回周波数が振動することを意味する。
[※6] ダイナミックレンジ
ネットワーク・アナライザに内蔵された受信機の感度を表す性能。ダイナミックレンジが高いほど優れた受信感度を実現できる。通常は、入力端子への最大入力電力から受信機がもつ最低感度までをdBの単位で表す。
[※7] 変調
無線通信システムでは、情報を電気信号に変換して伝送する。変換した電気信号を電波に乗せるための処理を変調と呼ぶ。
[※8] アクティブデバイス
増幅器などの高周波電子部品のこと。
[※9] 同軸
電波の伝送形態の一つ。主に通信用途で使用される同軸ケーブルなどで使用される。
[※10] 導波管
マイクロ波を伝送するために使用される中空の金属管。