アンリツ株式会社(社長 橋本 裕一)は、シグナルクオリティアナライザMP1800Aの機能を強化。業界で初めて、32 Gbit/s[※1]帯各種ハイスピードインターコネクト規格[※2]に対応した電子部品、回路基板の評価をマルチチャネル[※3]で可能とする新モジュールを開発。7月30日から販売いたします。
データ通信トラフィックの急増により、データセンタ内で用いられる高性能サーバの処理速度の高速化が課題となっています。このため、高性能サーバではハイスピードインターコネクト規格に準拠した32 Gbit/s帯の電子部品、回路基板の搭載が進展しています。
MP1800Aに、今回開発した28G/32Gbit/s PPG Module MU183020Aおよび28G/32Gbit/s ED Module MU183040Aを搭載することで、CEI-28G[※4]、32Gファイバチャネル[※5]、InfiniBand EDR[※6]など、各種ハイスピードインターコネクト規格に準拠した32 Gbit/s帯の電子部品・回路基板のBER測定[※7]やジッタトレランス試験[※8]などが2chから最大8chまでのマルチチャネルで行えます。
従来上記マルチチャネル評価を実施する際には、複数のMP1800Aを用いて試験システムを構築していました。このため2ch測定構成の場合、設備投資が高額になるとともに、チャネル間の信号を同期させるために煩雑で高度な作業が必要であり、試験信号の品質確保が課題となっていました。
アンリツは今回、1台のMP1800Aでマルチチャネル評価に対応したことにより、約40%の計測器導入コスト削減(2ch測定構成時)を可能とするとともに、チャネル間の信号同期が自動で行えることから測定精度、測定効率向上に貢献いたします。
[開発の背景]
データ通信トラフィックの急増により、データセンタ内で用いられる高性能サーバではハイスピードインターコネクト規格に準拠した32 Gbit/s帯の電子部品、回路基板の搭載が進展しています。
また、基幹通信網の分野においても、100 Gbit/s, 400 Gbit/s伝送を実現するために、32 Gbit/s帯のハイスピードインターコネクト規格を活用した研究開発が行われています。
ハイスピードインターコネクト規格は、ビットレートの高速化に加え、複数の通信チャネルを束ねて広帯域化することで、高速大容量通信を可能とする技術であることから、電子部品・回路基板の評価ではマルチチャネル測定が必要です。
しかし、マルチチャネル測定を可能とする計測器はこれまで市販されておらず、複数のMP1800Aを用いる必要がありました。このため、計測器の調達コストが高額になることやチャネル間の同期作業が必要となり試験信号品質の確保に手間がかかるなどの課題がありました。
そこでアンリツは、1台のMP1800Aで、各種ハイスピードインターコネクトのマルチチャネル測定を可能とする新モジュールとして、28G/32Gbit/s PPG Module MU183020Aおよび28G/32Gbit/s ED Module MU183040Aを開発いたしました。
[製品概要]
MP1800Aは、信号発生器(PPG)、誤り検出器(ED)、シンセサイザ、ジッタ発生モジュールを同時に搭載できる計測器であり、各種電子部品、回路基板の評価で必要とされるBER測定やジッタトレランス試験などが行えます。
28G/32Gbit/s PPG Module MU183020AはシグナルクオリティアナライザMP1800Aの信号発生器用新モジュールであり、最大2チャネルでDUT(Device Under Test:試験対象デバイス)に試験信号を送出できる機能を有しています。
28G/32Gbit/s ED Module MU183040Aは、MP1800Aの信号解析用新モジュールであり、最大2チャネルの信号を解析できる機能を有しています。
MP1800Aに上記PPGモジュールとEDモジュールを搭載することにより、CEI-28G、32Gファイバチャネル、InfiniBand EDRなど、各種ハイスピードインターコネクト規格に準拠した32 Gbit/s帯の電子部品・回路基板に対して、2chから最大8chで試験信号を送出し、DUTのBERやジッタトレランス、クロストークなどを測定できます。
さらに、本MP1800Aにすでに販売している4タップエンファシスMP1825Bを接続することでプリエンファシス信号[※9]を発生できます。これにより、エンファシス効果試験もマルチチャネルで行えます。
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[主な特長]
■32 Gbit/s帯ハイスピードインターコネクト規格に対応
32 Gbit/s帯ハイスピードインターコネクトは、CEI-28G、32Gファイバチャネル、InfiniBand EDRで規格化されています。本MP1800A試験システムは上記規格に対応した試験信号の発生・解析が行えます。
■1台の計測器で最大8chのマルチチャネル測定が可能
ハイスピードインターコネクト規格は、ビットレートの高速化に加え、マルチチャネル化により高速大容量通信を可能とする技術であることから、計測器においてもマルチチャネル測定が必要となっています。本MP1800A試験システムは最大8chのマルチチャネル測定が可能であり、1台の計測器で各種ハイスピードインターコネクト規格に準拠した32 Gbit/s帯の電子部品・回路基板を評価できます。
■高精度測定
本試験システムは1台のMP1800Aで構築できることに加え、複数の計測器を用いた試験システムで必要な煩雑で高度な信号同期が自動で行えます。さらに、今回開発したPPGモジュールは最大3.5 Vpp[※10]の低ジッタ、EDモジュールは50 mVppの高感度を実現しており、高精度な測定が効率よく行えます。
[対象市場・用途]
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対象市場
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コンピュータ・サーバーメーカー、通信機器メーカー、電子部品メーカー
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用途
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32 Gbit/s帯インターコネクト電子部品、回路基板の設計・開発
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[ ※用語解説]
[※1] Gbit/s:Gigabit per second
データ伝送速度の単位。1秒間に10億ビットのデータを伝送できる。
[※2] ハイスピードインターコネクト規格
サーバ内に搭載される電子部品や回路基板を高速接続する規格。
[※3] マルチチャネル
複数の通信チャネルを束ねて広帯域化すること。
[※4] CEI-28G
インターコネクトの電気インターフェースの規格。28Gbit/sに対応している。
[※5] 32Gファイバチャネル
ファイバチャネルは、主に高い性能が要求されるサーバで、コンピュータ本体と外部記憶装置を接続するのに利用されているデータ伝送方式。32Gファイバチャネルでは28 Gbit/sでのデータ伝送を可能とする。
[※6] InfiniBand EDR
InfiniBandは、主にスーパーコンピュータで複数のプロセッサや外部記憶装置間の接続に利用されているデータ伝送方式。EDRでは、26 Gbit/sでのデータ伝送を可能とする。
[※7] BER測定:Bit Error Rate測定
信号に含まれるビットエラーの割合を測定し、伝送品質を検証すること。
[※8] ジッタトレランス試験
電気信号を伝送する場合、経路特性や外部環境などの影響を受け、信号の伝達時間が変化する。こうした遅延時間の揺らぎをジッタと呼ぶ。ジッタトレランス試験は、被測定対象物へ任意のジッタ量を付加した信号を送出し、エラーを発生しないで動作するかどうかを解析する試験。
[※9] プリエンファシス信号
デジタル通信システムでは、伝送媒体固有の影響により高周波帯域の信号損失が発生し、通信品質に影響を及ぼす。この損失を補償するために、あらかじめ増幅した信号をプリエンファシス信号と呼ぶ。
[※10] Vpp:V peak to peak
電圧(V)波形の最も高い点と最も低い点との電位差。