400GbEトランシーバ、DSPのBERテスト機能を強化
2019/02/25
マルチチャネル、FECパターン発生、ISI、Error Counts Import機能
アンリツ株式会社(社長 濱田 宏一)は、400GbE[※1]など高速インタフェースのビットエラーレートテスト[※2]をサポートする、シグナル クオリティ アナライザ-Rシリーズ MP1900AのPAM4 BERテスト機能を強化。新たに、最大4チャネルのマルチチャネル機能、400GbEマルチレーンのFEC[※3]パターン発生および伝送路損失を模擬できるISI[※4]ストレス信号発生オプション、DUT(被測定物)のエラーカウンタ読み込みアプリケーションソフトウェアを開発。2月25日から販売を開始します。
本商品は、リリース済みのPAM4 PPG MU196020Aに追加可能なオプションとソフトウェアです。
今回の機能強化により、データセンタ内の高速通信用トランシーバやDSP[※5]で重要度が増している400GbE PAM4[※6]信号のマルチレーン、FECパターン発生とジッタ付加を、パターン発生器で唯一サポートでき、お客さまの開発・検証期間短縮に貢献します。
開発の背景
次世代5Gモバイル通信やクラウド通信サービスの普及により、データ通信トラフィックのさらなる増大が予想されています。そのインフラとなるデータセンタでは、高速化に加え、PAM4やマルチレーンを用いた伝送容量の拡張が検討されています。
今後データセンタでサービスが開始される400GbEは、QSFP-DD/OSFP[※7]などマルチチャネルに対応する新たなトランシーバやデバイスの採用、PAM4信号による物理層の伝送でFECによるエラー訂正が必要になります。そのため、BERTによる評価では、従来のジッタ耐力[※8]測定や入力感度測定に加えて、マルチチャネルによるクロストーク[※9]、エラー訂正の影響を検証する必要性が高まっています。そこで、PAM4 PPG MU196020Aにマルチチャネル、FECパターン発生機能を追加し、400GbE向けトランシーバの物理層試験要求に対応しました。
また、400GbE規格で定義されているインタフェースは、相互接続性を確保するため、チップ間、チップ-モジュール間の伝送線路損失が規定されています。このため、複数の規格に対応するICの検証や伝送路損失影響の検証は、複数の異なるPCボード[※10]を試作して測定を行う必要があるため、検証に時間と費用がかかるという課題があります。信号レベル間のギャップが従来のNRZ[※11]方式に対して1/3となるPAM4方式では、さらにシビアな検証が要求されます。
そこで、PAM4 PPG MU196020Aに複数のPCボードを試作することなく、PCボード通過後を模擬した信号発生を可能とするISI機能を搭載しました。
一般的に高速デバイスのBER測定は、被測定物からの出力をED(エラーディテクタ)で受信し、そのビットエラーを測定します。PRBSなど特定のテストパターンのエラー測定機能は、被測定物であるIC内に搭載されるようになってきており、開発初期のエラーチェックや、EDが無い場合でも有用です。しかし、PPGと被測定物のエラー測定機能はそれぞれ別々に操作が行われるため、例えば、ジッタ耐力測定ではユーザ自身がPPGと被測定物のエラー測定機能を連動させる必要や、測定結果をまとめなければならない煩わしさがありました。
そこで、被測定物であるICのエラーチェック機能のインタフェースと通信する機能をMP1900Aに搭載しました。これにより、ICのエラーチェック機能を使ったジッタ耐力測定がより容易に実施できます。
開発商品の概要
シグナル クオリティ アナライザ-R MP1900Aは、高度な信号発生と信号性能の解析をサポートし、400Gを超える通信速度に対応したビットエラーレートテスターです。
今回販売を開始するPAM4 PPGモジュールのオプションは、4ch(MP1900A本体1台あたり)まで拡張可能なマルチチャネル機能、100GbE/200GbE/400GbEで定義されているFECパターン発生とエラー挿入機能、さまざまなPCボードの伝送路損失をPPG出力で模擬することができるISI発生機能を追加しました。これにより、マルチチャネル測定、FECによるエラー訂正検証が要求される400GbEトランシーバの開発・検証期間の短縮に貢献します。
さらに、MP1900A用アプリケーションソフトウェアのError Counts Imports機能を使用することにより、被測定物エラーチェック機能の測定結果をMP1900A画面から読み取ることが可能です。ICの開発段階にあわせて、またはPPGのみ測定器を導入した場合でも、ICのエラー測定、ジッタ耐力測定をシンプルな構成、容易な操作で実現できるため、より効率的なBER測定に貢献いたします。
MP1900A PAM4 BERTについてもっと詳しく
対象市場・用途
- 対象市場
- 400GbE向けトランシーバ・デバイス
- 用途
- 400GbE向けトランシーバ・デバイスのビットエラーレート評価
用語解説
- [※1] 400GbE
- 400 Gigabit Ethernet。IEEEで審議されている通信規格。
- [※2] ビットエラーレートテスト
- デジタル信号の誤り率テスト。
- [※3] FEC
- Forward Error Correctionの略。データ転送における誤り制御システムの一つ。
- [※4] ISI
- Inter Symbol Interferenceの略。シリアル伝送における信号の歪みの一つで、帯域制限による信号の劣化などのこと。
- [※5] DSP
- Digital Signal Processorの略。デジタル信号処理に特化したマイクロプロセッサ。
- [※6] PAM4
- PAM(Pulse Amplitude Modulation)は、電圧の振幅(パルスの高さ)を変化させて制御する伝送方式。PAM4では、1タイムスロットの中に4レベルで2ビットの情報を伝達できる。
- [※7] QSFP-DD/OSFP
- 200GbE、400GbE向けトランシーバのコネクタ規格。
- [※8] ジッタ耐力
- デジタル伝送品質の指標の一つで、デジタル信号の時間軸方向の揺らぎに対する耐力。
- [※9] クロストーク
- 伝送信号が他の伝送路に漏れること。
- [※10] PCボード
- Printed Circuit Boardの略称。またはプリント基板。電子部品を固定して配線するための基板。
- [※11] NRZ
- Non-Return-to-Zeroの略。デジタル信号の表現方法の一つ。