アンリツ株式会社(社長 橋本裕一)は、ラジオ コミュニケーション アナライザ MT8821Cの機能を強化し、1台の無線機テスタで、ダウンリンク (DL:基地局から端末方向)のデータ通信で利用される 4x4 MIMO[※1]やキャリアアグリゲーション(CA) 5CCs[※2]に対応したLTE-Advanced端末の評価を可能にするソフトウェアを開発。3月24日から販売いたします。
MT8821Cは、LTE-Advanced端末のRF送受信試験機能と擬似基地局機能を搭載したワンボックステスタであり、すでにDL CA 4CCs 2x2 MIMOに対応しています。
今回開発した下記ソフトウェアを使用することにより、試験機能を拡張。DL CA 2CCs 4x4 MIMO 端末のOTA評価やDL CA 5CCs SISO端末のRF受信性能評価[※3]などを可能としました。
MX882112C-012 LTE FDD 4x4 MIMO DL
MX882113C-012 LTE TDD 4x4 MIMO DL
MX882112C-051 LTE-Advanced FDD DL CA 5CCs 測定ソフトウェア
MX882113C-051 LTE-Advanced TDD DL CA 5CCs 測定ソフトウェア
さらにアンリツは、今回の機能強化に合わせ、すでに販売しているMT8821C用測定ソフトウェアの機能も拡充。LTE測定ソフトウェアでは、フィジカル・スループット[※4]をリアルタイムでグラフ表示するスループット・モニター機能を搭載。また、LTE IPデータ転送ソフトウェアでは、GUI上のパラメータ設定で簡単にiperf[※5]コマンドを実行するIPデータ・アプリケーションを搭載しました。
MX882164C VoLTE Echobackソフトウェアについても機能を拡充し、
VoLTE[※6]の消費電力試験で必要な、3GPPで規格化されている
Narrow Band AMR/Wide Band AMR[※7]とVideo Echobackに対応しました。
アンリツは今後も、LTE-Advancedに対応した測定ソリューションの提供を通じ、モバイルブロードバンドサービスの発展に貢献してまいります。
[開発の背景]
携帯端末を利用した動画などのリッチコンテンツサービスの急増に伴い、LTEをさらに高速化したLTE-Advancedの採用が世界各国の通信事業者で進んでいます。
LTE-Advancedでの高速化のキーテクノロジーとして、主に複数のコンポーネントキャリアを束ねるキャリアアグリゲーションや、複数のアンテナを使用して通信を行うMIMOが挙げられます。
そこでアンリツは、2015年9月にDL CA 4CCs測定ソフトウェアの販売を開始したことにより、1台のMT8821CでLTE-Advanced DL CA 4CCs 2x2 MIMO端末の評価を可能にしました。
さらに今回、MT8821Cの機能を強化・拡充し、各国が導入を開始したLTE 4x4 MIMO DLや、将来商用化が検討されているDL CA 5CCsへの対応を行いました。
[製品概要]
ラジオ コミュニケーション アナライザ MT8821Cは、携帯端末のRF送受信試験機能と擬似基地局機能を搭載したワンボックステスタです。今回新たに機能強化を図り、下記4種類のソフトを開発。LTE 4x4 MIMO DL端末や、LTE-Advanced DL CA 5CCs端末の評価を可能としました。
<4x4 MIMO対応ソフトウェア>
MX882112C-012 LTE FDD 4x4 MIMO DL
FDD方式[※8]の 4x4 MIMO DL対応LTE端末を評価できる測定ソフトウェア。
MX882113C-012 LTE TDD 4x4 MIMO DL
TDD方式[※9]の4x4 MIMO DL対応LTE端末を評価できる測定ソフトウェア。
これらのソフトウェアを、すでに発売しているLTE 2x2 MIMO DL測定構成モデルのMT8821Cに搭載することにより、LTE 4x4 MIMO DL端末のRF受信性能評価、IPデータ転送試験が行えます。
<5CCs対応ソフトウェア>
MX882112C-051 LTE-Advanced FDD DL CA 5CCs 測定ソフトウェア
FDD方式のLTE-Advanced DL CA 5CCs端末の評価に対応した測定ソフトウェア。
MX882113C-051 LTE-Advanced TDD DL CA 5CCs 測定ソフトウェア
TDD方式のLTE-Advanced DL CA 5CCs端末の評価に対応した測定ソフトウェア。
これらのソフトウェアを、パラレルフォン測定ハードウェアを搭載したLTE-Advanced DL CA 4CCsの測定構成モデルのMT8821Cに搭載することにより、LTE-Advanced DL CA 5CCs端末のRF受信性能評価が行えます。
また、MT8821C用各測定ソフトウェアの機能も拡充し、LTEでは、フィジカル・スループットのグラフ表示機能や、GUI上のパラメータ設定でiperfコマンドを実行するIPデータ・アプリケーションを搭載。VoLTE Echobackでは選択可能な音声コーデックの拡充、Video Echobackの機能の追加を行いました。
[ MT8821Cについてもっと詳しく ]
[主な特長]
■4x4 MIMOでのLTE-Advanced DL CA 2CCs試験に1台で対応
すでに販売しているIPデータ転送試験ソフトウェアを搭載したLTE-Advanced DL CA 2CCs 2x2 MIMO構成のMT8821Cに、今回開発したLTE 4x4 MIMO DLソフトウェアを搭載することにより、LTE-Advanced DL CA 2CCs 4x4 MIMOでのRF受信性能試験やIPデータ転送試験を1台で行うことができます。
■DL CA 5CCs SISO試験に1台で対応
すでに販売している、パラレルフォン測定ハードウェアを搭載したLTE-Advanced DL CA 4CCs構成のMT8821Cに、今回開発したLTE-Advanced DL CA 5CCsソフトウェアを搭載することにより、LTE-Advanced DL CA 5CCs SISOでのRF受信性能試験を1台で行うことができます。
[対象市場・用途]
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対象市場
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チップセットメーカー、携帯端末メーカー、通信事業者
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用途
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チップセットや携帯端末の開発、通信事業者の端末受け入れ試験
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[※用語解説]
[※1]4x4 MIMO
MIMO(Multiple Input Multiple Output)は、複数アンテナを使用して同時にデータを送受信し、通信レートを高速化する技術。4x4 MIMOは、送受信で各4本のアンテナを使用する。
[※2]キャリアアグリゲーション 5CCs
キャリアアグリゲーションは、複数のコンポーネントキャリアを同時に使用することにより、広い帯域を確保して通信レートを向上させる技術。5CCsは5つのコンポーネントキャリアを束ねる技術。
[※3]RF受信性能評価
受信感度点付近の弱いレベルのダウンリンク信号を受信できるかを評価するReference Sensitivity Levelなど、UEの受信性能を評価する試験。LTEの場合、3GPP TS 36.521-1 7章で規定されている試験項目。
[※4]フィジカル・スループット
物理層におけるスループットのこと。
[※5]iperf
ネットワークのTCP/UDPスループットを測定するソフトウェアで、サーバーとクライアントの両方にインストールして使用する。
サーバー側はクライアント側へスループット測定用のサンプルデータを送信し、クライアント側はサンプルデータの受信レートからスループットを算出する。
[※6]VoLTE
オペレータが提供するLTEサービスによる音声通話サービス。
通話用に帯域を確保し、従来の音声通話より低遅延、高音質な通話(HD Voice)が可能となっている。
[※7]Narrow Band AMRとWide Band AMR
Narrow Band AMR (Narrow Band Adaptive Multi-Rate)とWide Band AMR (Wide Band Adaptive Multi-Rate)は、音声符号化方式の一種。3Gで採用されたNarrow Band AMRで伝えられる音声の周波数帯域は300 Hzから3.4 kHzなのに対し、VoLTEで採用されたWide Band AMRで伝えられる音声の周波数帯域は50 Hzから7 kHzと広く、音声に含まれる周波数のほとんどを取り込めるため非常にクリアな通話が可能となる。
[※8]FDD方式
LTEには、FDD方式(LTE FDD)とTDD方式(LTE TDD)の2つがある。LTE FDDは、使用する周波数帯域を送信用と受信用に分割し、同時に送受信する方式である。
[※9]TDD方式
LTE TDDは、送信信号と受信信号を同じ周波数で短い時間間隔で分割し、交互に伝送する方式である。