アンリツ株式会社(社長 橋本 裕一)は、無線LAN測定ソリューションを拡充。新たに、次世代無線LAN規格であるIEEE802.11ac[※1]に対応した通信機器の評価を可能とするシグナルアナライザMS269xAシリーズ/MS2830A用測定ソフトウェアと波形生成ソフトウェア、ベクトル信号発生器MG3710A/MG3700A用波形生成ソフトウェアを開発。11月9日から販売を開始いたします。
IEEE802.11acは周波数帯域幅[※2]の広帯域化により1 Gbps[※3]超の高速通信を可能とする無線LANの国際標準規格であり、必須帯域幅として最大80 MHz[※4]、オプション帯域幅として160 MHzで運用されることが規定されています。
そこでアンリツは、従来から提供している無線LAN測定構成のシグナルアナライザMS269xAシリーズ/MS2830Aおよびベクトル信号発生器MG3710A/MG3700AでIEEE802.11acへの対応を図り、MS269xAシリーズ/MS2830A用測定ソフトウェアと波形生成ソフトウェアおよびMG3710A/MG3700A用波形生成ソフトウェアを開発しました。
MS269xAシリーズ/MS2830A用測定ソフトウェアを使用することにより、MS269xAシリーズ/MS2830Aでは、各々最大160 MHz/80 MHzの帯域幅で運用されるIEEE802.11ac対応無線LAN機器から送信される信号特性を評価できます。さらに、波形生成ソフトウェアとMS269xAシリーズ/MS2830Aのオプションで提供している無線LAN信号源構成のベクトル信号発生器(MS269xA-020/MS2830A-021)を追加することにより、80 MHz帯域幅の試験信号の発生も可能。1台のシグナルアナライザで、80 MHz帯域幅で運用されるIEEE802.11ac無線LAN機器の送信特性と受信特性評価が行えます。
MG3710A/MG3700A用波形生成ソフトウェアを使用することにより、従来から提供している無線LAN信号源構成のMG3710Aでは、160 MHz帯域幅の試験信号を、MG3700Aでは80 MHz帯域幅の試験信号をIEEE802.11ac無線LAN機器に出力できます。
また、IEEE802.11acでは、「非連続80MHz+80MHz帯域幅信号[※5]」で160MHzの信号を構成する技術が採用されていますが、この試験信号を出力するためには、従来2台の信号発生器が必要でした。MG3710Aは上限周波数6 GHz[※6]および変調帯域幅160 MHzに対応したRF[※7]信号出力ポートを最大2セット搭載可能であり、1台で非連続80 MHz+80 MHz帯域幅の試験信号を出力することができます。
アンリツは、無線LAN機器の汎用計測器として使用されているシグナルアナライザとベクトル信号発生器でIEEE802.11ac無線LAN機器の評価を可能としたことにより、モバイルブロードバンドサービスの円滑な普及・発展に貢献いたします。
[開発の背景]
スマートフォンやタブレット端末の普及にともない、大容量のデータを取り扱うクラウドサービスや高精度な動画サービスの利用が急増しています。
その一方、回線容量逼迫が課題となっていることから、無線LANのさらなる高速大容量化が進展しており、次世代無線LANシステムでは、周波数帯域の広帯域化により1 Gbps超の通信速度を有するIEEE802.11acの規格化が進められています。
IEEE802.11acでは、必須帯域幅として最大80 MHz、オプション帯域幅として160 MHzで運用されることが規定されていることから、この帯域幅で評価を行える計測器のニーズが高まっています。
上記無線LAN機器の評価では、送信信号の特性を評価できるシグナルアナライザと受信特性評価の信号源となるベクトル信号発生器が必要とされています。
そこでアンリツは、シグナルアナライザMS269xAシリーズ/MS2830Aとベクトル信号発生器MG3710A/MG3700Aの無線LAN測定ソリューションを拡充。新たに、MS269xAシリーズ/MS2830A用測定ソフトウェアと波形生成ソフトウェアおよびMG3710A/MG3700A用波形生成ソフトウェアを開発しました。
[製品概要]
■シグナルアナライザMS269xAシリーズ/MS2830A用ソフトウェア
今回開発したソフトウェアは、MS269xAシリーズ用802.11ac (160 MHz) 測定ソフトウェア MX269028A-002とMS2830A用802.11ac(80 MHz)測定ソフトウェア MX269028A-001およびMS269xAシリーズ/MS2830A用波形生成ソフトウェア802.11ac (80 MHz)オプション MX269911A-001です。
MX269028A-002/ MX269028A-001を使用することにより、従来から提供している無線LAN測定構成のMS269xAシリーズ/MS2830Aでは、各々最大160 MHz/80 MHzの帯域幅でIEEE802.11ac対応無線LAN機器が送信した信号の特性を評価できます。さらに、MX269911A-001とすでにオプション提供している無線LAN信号源構成のベクトル信号発生器(MS269xA-020/MS2830A-021)を追加することにより、80 MHzの無線LAN機器の受信特性評価で必要となる試験信号を出力できます。
■ベクトル信号発生器MG3710A/MG3700A用ソフトウェア
今回開発したソフトウェアは、MG3710A用波形生成ソフトウェア802.11ac(160 MHz)オプション MX370111A-002とMG3700A用波形生成ソフトウェア802.11ac (80 MHz) オプション MX370111A-001です。
本ソフトウェアを使用することにより、従来から提供している無線LAN信号源構成のMG3710A/MG3700Aでは、各々最大帯域幅160 MHz/80 MHzに対応した無線LAN機器の受信特性評価で必要となる試験信号を出力できます。
[主な特長]
■用途に応じた試験環境の構築が可能
無線LAN機器の商用化では、開発段階では妨害波や干渉波測定を含めた詳細な解析、製造工程では主に搬送波測定と評価項目が異なります。
今回のソフトウェア拡充により、160 MHz対応IEEE802.11ac無線LAN機器の開発ではMS269xAとMG3710A、80 MHz対応IEEE802.11ac無線LAN機器の製造ではベクトル信号発生器搭載モデルのMS2830Aを使用するという選択が行え、用途に応じた試験環境を構築できます。
■優れた操作性
今回開発したMS269xAシリーズ/MS2830A用測定ソフトウェアは本体組み込み型であり、表示画面の操作で測定が行えます。これにより、マウスやキーボードなど周辺機器を用いる必要がなく、測定操作が簡易に行えます。
また、MS269xAシリーズ/MS2830A、MG3710A/MG3700A用波形生成ソフトウェアは、それぞれ本体のEasy setup機能を利用することにより、簡単な操作でIEEE802.11ac規格に沿った波形パターンを生成できます。
■1台のシグナルアナライザで80MHzのIEEE802.11ac対応無線LAN機器の評価が可能
MS269xAシリーズ/MS2830Aはオプションでベクトル発生器(MS269xA-020/MS2830A-021)を内蔵できます。本構成のMS269xAシリーズ/MS2830Aで今回開発した測定ソフトウェアと波形生成ソフトウェアを使用することにより、試験信号源としても動作します。これにより1台のシグナルアナライザで、80 MHzのIEEE802.11ac対応無線LAN機器の送信特性と受信特性を評価できます。
■1台のMG3710A/MG3700Aで160 MHz信号から非連続80 MHz+80 MHz信号まで出力可能
IEEE802.11acでは1つの周波数帯で帯域幅160 MHzの信号を送信することに加え、周波数利用効率を高めるために、異なる周波数帯から同時に2つの非連続な80 MHz帯域幅の信号を送信し、160 MHz帯域幅の信号を構成する技術が採用されています。従来この2つの非連続な試験信号を出力する場合には2台のベクトル信号発生器が必要でしたが、MG3710Aは上限周波数6 GHzおよび変調帯域幅160 MHzに対応した2セットのRF信号出力ポートを搭載でき、1台で上記試験信号を出力できます。
シグナルアナライザMS269xAシリーズ/MS2830A
MS269xAシリーズは、50 Hz~6 GHzの周波数範囲において、優れた総合レベル確度と変調精度、広帯域解析を実現したシグナルアナライザです。広帯域FFT[※8]解析が行えるベクトル・シグナル・アナリシス機能、信号波形をデジタルデータとして取り込めるデジタイズ機能も標準搭載しており、ワイヤレス通信システムの研究・開発や高性能が要求されるデバイス、基地局の試験が効率よく行えます。
MS2830Aは、高速測定と高精度測定を低価格で実現したシグナルアナライザです。
スペクトラムアナライザのみの基本モデルから送受信試験を一台で行えるワンボックス構成まで、用途に応じた測定システムを柔軟に構築できます。
MS269xAシリーズ/MS2830Aは、オプションでベクトル信号発生器を内蔵でき、1台で送信/受信特性評価が行えます。
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ベクトル信号発生器MG3710A/MG3700A
MG3710A/MG3700Aは、各種移動通信システム(LTE・W-CDMA・GSM・CDMA2000など)、無線LAN、デジタル放送設備、狭帯域無線通信システムなどの受信・送信特性評価で必要とされるRF信号を出力できるベクトル信号発生器です。
MG3710Aは、MG3700Aの機能をさらに強化し、上限周波数6 GHzおよび変調帯域幅160 MHzに対応した最大2セットのRF信号出力ポートを搭載でき、最大4種類の試験用RF信号の出力が可能。複数の信号を使用する試験の信号源として利用できます。
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[対象市場・用途]
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対象市場
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無線LAN搭載製品メーカー、無線LAN搭載モジュールメーカー、無線LAN向けRFデバイスメーカー
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用途
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IEEE802.11ac対応の無線LAN機器の開発・製造・品質保証
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[ ※用語解説]
[※1] IEEE802.11ac
IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) で、現在策定が進められている無線LANの国際標準規格。1 Gbps超の高速データ通信を可能とする。
[※2] 帯域幅
電波の周波数の範囲。この範囲は広いほど、一度に大量のデータを伝送できる。
[※3] Gbps:Giga bit per second
通信速度の単位。1 Gbpsは、1秒間に10億ビットのデータを伝送できる。
[※4] MHz(メガヘルツ)
周波数の単位であり、1秒間に100万回周波数が振動することを意味する。
[※5] 非連続80MHz+80MHz帯域幅信号
異なる周波数帯から同時に送信される2つの非連続な80 MHz帯域幅の信号から構成される160 MHz帯域幅の信号。
[※6] GHz(ギガヘルツ)
周波数の単位であり、1秒間に10億回周波数が振動することを意味する。
[※7] RF:Radio Frequency
電磁波や電気信号のうち、無線通信に利用できる周波数のもの。
[※8] FFT:Fast Fourier Transform
高速フーリエ変換。フーリエ変換とは信号中に含まれている周波数成分を抽出する処理。
FFT技術を用いることで、信号を取りこぼし無く捉え、被測定信号のスペクトラムや周波数/電力/位相の時間変動などを多面的に解析できる。従来の掃引型スペクトラムアナライザでは捉えられなかった瞬時的に発生した現象の解析に威力を発揮する。