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広帯域ベクトルネットワークアナライザME7838Aの販売を開始

2011/06/14

広帯域マイクロ波・ミリ波デバイスの開発コスト削減に貢献

 

アンリツ株式会社(社長 橋本 裕一)は、広帯域ベクトルネットワークアナライザME7838Aを開発。6月14日から販売を開始いたします。

ME7838Aは、70 kHz[※1]から110 GHz[※2]という広範な周波数範囲で動作するベクトルネットワークアナライザであり、各種高速情報通信システムやレーダなどに組み込まれる広帯域マイクロ波[※3]デバイス・ミリ波[※4]デバイスの開発用計測器として利用できます。

ME7838Aは、従来機種(ME7828A)のシステム構造を見直し、2台の外部信号源を不要としました。さらに測定モジュールを1/10に小型化したことで、試験システムの導入において、約500万円の費用低減を図りました。

また、測定精度の向上を図り、70 kHzから110 GHzの全周波数帯域で100 dB以上のダイナミックレンジ[※5]を実現。通常ではノイズに埋もれてしまう低レベルの特性も解析できます。測定速度も高速化し、この分野で使用されているベクトルネットワークアナライザの約10倍の高速測定が行えます。

アンリツは、ME7838Aを提供することで、広帯域マイクロ波・ミリ波デバイスの開発コスト削減、品質向上に貢献いたします。


[開発の背景]

広帯域マイクロ波デバイス・ミリ波デバイスは、60 GHz WPAN[※6]、40 Gbps[※7]以上の光ネットワーク、77 GHz車載レーダ、電波天文学用の94 GHzミリ波レーダなど、次世代通信システムやレーダの性能を支える電子部品です。

広帯域マイクロ波・ミリ波デバイスの開発で使用される試験システムは、ベクトルネットワークアナライザ、測定モジュール、外部信号源、測定モジュールを固定するための専用治具、高周波プローバ[※8]から構成されることから高額な設備投資が必要でした。

このため、デバイスメーカーからは低コストで高精度な測定を可能とする計測器が求められていました。

そこでアンリツは、従来から提供していたミリ波ベクトルネットワークアナライザ ME7828Aの後継機種として、ME7838Aを開発いたしました。

ME7838Aを使用することで、測定システムの導入費用を約500万円低減できるとともに、ME7828Aの10倍の速度で高精度な測定が行えます。


[製品概要]

広帯域ベクトルネットワークアナライザME7838Aは、高速次世代通信システムや車載レーダ、電波天文学におけるミリ波レーダなどで利用される各種デバイスの開発で実施されるモデリング[※9]や特性評価用計測器です。1台のベクトルネットワークアナライザで、70 kHzから110 GHz(実効値40 kHzから125 GHz)までという広範な周波数範囲で正確な測定が可能です。60 GHz WPANや40 Gbps以上の光ネットワーク、77 GHz車載レーダ、電波天文学用の94 GHzミリ波レーダなどで使用される各種デバイスの高性能化に最適です。


[ この製品をもっと詳しく ]

[主な特長]

■導入コスト削減

ME7838Aは従来機種で必要だった2台の外部信号源を不要とするとともに、測定モジュールを1/10の大きさにしたことにより、高周波プローバの取り付け台を小型で安価なものにできます。これにより、測定システムの導入費用を約500万円低減できます。

■高精度測定

高周波信号はケーブルを伝送中に出力パワーが損失し、測定精度に影響します。ME7838Aは、従来以上に短いケーブルを使用でき、RFプローブ[※10]の直近に測定モジュールを配置可能。出力パワーの損失を抑制できます。これにより、ME7838Aの性能(ダイナミックレンジ:110 GHzで110 dB以上、70 kHzから110 GHzまでの全周波数帯域で100 dB以上)を十分に発揮でき、通常ではノイズに埋もれてしまう低レベルの特性も解析できます。

■高速測定

ME7838Aは、201ポイントの測定ポイントを50ミリ秒(IF:10kHz)で掃引[※11]できる高速測定を実現しています。この分野で使用されているベクトルネットワークアナライザの約10倍の高速測定が行え、開発効率向上に貢献いたします。

■優れた信頼性・安定性

ME7838Aは、業界最高水準の自動校正機能を搭載しています。校正作業を大幅に簡略できるとともに、校正後24時間での振幅[※12]は0.1 dB、位相[※13]は0.5度以下を実現しており、信頼性と安定性に優れた測定結果を得ることができます。


[対象市場・用途]

対象市場

デバイスメーカー

用途

広帯域マイクロ波デバイス、ミリ波デバイスの開発


[ ※用語解説]

[※1] kHz:キロヘルツ
周波数や振動数を表す単位。1秒間に1回の振動が1 Hzとなり、1 kHzは1秒間に1000回振動することを意味する。

[※2] GHz:ギガヘルツ
周波数や振動数を表す単位。1 GHzは1秒間に10億回周波数が振動することを意味する。

[※3] マイクロ波
波長が100μm~1m、周波数が300 MHz~3 THz(テラヘルツ:1秒間に1兆回周波数が変動する)の電波。

[※4] ミリ波<
波長が1ミリ~10ミリ、周波数が30 GHz~300 GHzまでの電波。

[※5] ダイナミックレンジ
ネットワークアナライザの最高出力レベルからノイズレベルの差。ダイナミックレンジが狭いと被測定物の低いレベルの特性がノイズに埋もれてしまい、正しく特性が測定できない。

[※6] WPANWireless Personal Area Networks
数メートルから数十メートルと無線LANよりも狭いカバーエリアの無線通信ネットワーク。無線LANに比べ、伝送距離は短いが、伝送速度が速く低消費電力であることが特徴。デジタル家電などでの使用が期待されている。

[※7] GbpsGigabit per second
データを伝送できる速度。1Gbpsは、1秒間に10億ビットのデータを伝送できる。

[※8] 高周波プローバ
測定対象となるデバイスの微細なチップに様々な電極を接触させるための装置。

[※9] モデリング
回路を定型化するための手法。モデリングすることにより、半導体デバイスを使用した回路を効率よく設計できる。

[※10] RFプローブ
半導体ウェハ上のチップに接触し、RF信号を入出力する触針と測定器に接続する同軸コネクタを有する電子部品。

[※11] 掃引
ベクトルネットワークアナライザが測定をする際に行う内部動作の一つ。画面の左端から右端へと測定結果が徐々に更新されていくように表示される。

[※12] 振幅
信号の大きさが振れる幅。

[※13] 位相
波の一周期を角度に置き換え、一周期中の位置を表す。波の始点を0度としたとき、一周期終了点が360度。

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