アンリツ株式会社(社長 戸田 博道)は、光回線の施工・保守用ハンドヘルド計測器であるアクセスマスタシリーズの新モデルを開発。アクセスマスタMT9082Cの販売を10月23日から開始いたします。
MT9082Cは、アクセスマスタシリーズのハイエンドモデルです。従来機種(MT9082B)の高品質なリアルタイム波形表示、短デッドゾーン[※1]などを踏襲していることに加え、最大45 dBのダイナミックレンジ[※2]を実現しました。これにより、試験対象となる光ファイバの距離を200 km超まで延伸できることに加え、従来機種の約1/5の時間で光ファイバを測定できます。
また、150,001という従来機種の約5倍のサンプリングポイント[※3]を実現したことにより、遠端部でも2 m間隔で障害箇所を確認できます。
さらに、FTTH-PON[※4]システムにおける測定機能も強化。従来機種は1×64分岐のFTTH-PONシステムに対応していましたが、MT9082Cは、1×128分岐のFTTH-PONシステムの測定を可能としました。これにより、1×128分岐のFTTH-PONシステムにおいても、スプリッタ(光ファイバの分岐装置)から収容局までの光ファイバで発生する障害が検知できます。
MT9082Cを用いることにより、短距離の光ファイバはもちろんのこと、200km超の長距離光ファイバ、1×64分岐/1×128分岐のFTTH-PONシステムの測定が、1台の計測器で行えます。
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[開発の背景]
地域間のデジタルデバイド[※5]の解消や地上デジタル放送の難視聴地域への対応、FTTH-PONシステムの拡大などにともない、光回線の施工・保守作業は増加の一途をたどっています。
アンリツは長年にわたり、光ファイバの施工・保守用計測器を提供しており、近年はアクセスマスタシリーズを通して、高品質な光回線の構築に貢献していますが、より長距離の光ファイバやFTTH-PONシステムにおいて、障害発生頻度の高いスプリッタ(光ファイバの分岐装置)から収容局までの光ファイバなども測定できる計測器が求められていました。
そこでアンリツは、アクセスマスタシリーズのラインアップを拡充。新たに、MT9082Cを開発いたしました。MT9082Cを使用することにより、短距離の光ファイバはもちろんのこと、200 kmを超える長距離光ファイバや1×128分岐のFTTH-PONシステムの測定が可能。1台のMT9082Cで、各種光ファイバの測定が高精度に行えます。
[製品概要]
アクセスマスタシリーズMT9082Cは、光ファイバの施工・保守用ハンドヘルド計測器です。OTDR[※6]、OLTS[※7]、安定化光源、光パワーメータを搭載していることに加え、オプションで高性能光パワーメータ、可視光源、IPネットワーク接続確認機能を搭載できます。また、光ファイバのコネクタ端面の状態を検査できる外付け光ファイバスコープも接続可能。光ファイバの施工・保守に必要な測定が1台のMT9082Cで行えます。
従来機種の高速測定、高品質なリアルタイム波形表示、短デッドゾーンを踏襲していることに加え、ダイナミックレンジやサンプリングポイント数をさらに向上させたことにより、短距離光ファイバのみならず、200km超の光ファイバの試験が効率よくかつ高精度に行えます。
MT9082Cは以下2機種を揃えており、波長の種別に応じた機種を選択できます。
- MT9082C-053:SMF[※8]1.31/1.55 μm OTDR
- MT9082C-057:SMF1.31/1.55/1.625 μm OTDR
[主な特長]
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広ダイナミックレンジと短デッドゾーンの両立を実現
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MT9082Cは、ダイナミックレンジを最大45 dB(保証値)まで拡大しました。これにより、従来モデルよりも、広範囲に波形を表示できることから、試験対象となる光ファイバの距離を延伸でき、200 km超の光ファイバを評価できます。また、イベントデッドゾーン[※9]0.8 mと後方散乱デッドゾーン[※10]3.8 mという短デッドゾーンも併せて実現しており、短距離・長距離の光ファイバが1台の計測器で測定できます。
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測定時間を大幅に短縮
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MT9082Cは、ダイナミックレンジを拡大したことにより、従来機種ではノイズとなって表示されていた信号のレベルを明確に確認できます。このため、従来機種で必要とされていたノイズの除去作業が不要となり、測定時間を約1/5に短縮できます。
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長距離ファイバの障害点検出精度が向上
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MT9082Cは、サンプリングポイントが最大150,001ポイントに向上しており、障害箇所の検出精度が改善。200 km超の光ファイバの遠端部でも2 m間隔で測定でき、障害箇所を迅速に発見できます。
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最大128分岐のFTTH-PON測定に対応
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MT9082Cは、FTTH-PONシステムへの対応をさらに強化し、最大128分岐のFTTH-PON システム測定を実現しました。これにより、128分岐のFTTH-PONシステムにおいても、スプリッタから収容局までの光ファイバで発生する障害を検知できます。
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0.1dBの微小損失をリアルタイム波形で確認可能
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MT9082Cは、0.1 dBという微小な損失をリアルタイム波形で表示でき、光ファイバの接続状況を容易かつ高精度に確認できます。
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[対象市場・用途]
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対象市場
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光回線工事業者、光回線保守業者、FTTHサービスプロバイダ
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用途
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アクセス系光ファイバの施工・保守・開通試験・障害切り分け
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[ ※用語解説 ]
[※1] デッドゾーン
光ファイバ用計測器の性能を表す尺度。コネクタなど反射性を有する部品で接続された光ファイバを2箇所で分離できる単位。
[※2] ダイナミックレンジ
光ファイバ用計測器の性能を表す尺度。光のレベル損失を距離に応じて表示する機能であり、ダイナミックレンジが広いほど、長距離の光ファイバを測定できる。
[※3] サンプリングポイント
光ファイバの距離測定において抽出するデータの数。サンプリングポイント数が大きいほど詳細な測定ができる。
[※4] FTTH-PON
スプリッタにより一本の光ファイバを分岐し、複数の加入者宅に引き込むアクセス系光ネットワーク。
[※5] デジタルデバイド
情報通信技術(特にインターネット)の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる格差のこと。
[※6] OTDR
Optical Time Domain Reflectometer
光パルス試験のこと。レーザ光を使って光ファイバの特性(ファイバ長、損失、接続個所の位置)を測定する。
[※7] OLTS
Optical Loss Test Set
光ロステストセット。安定化光源と光パワーメータを搭載し、敷設した光ファイバの光損失を測定する計測器。
[※8] SMF
Single Mode Fiber
光ファイバの種類の1つ。低損失であり、長距離伝送・高速伝送に適している。
[※9] イベントデッドゾーン
光ファイバの分離が確認できる最小の距離を表現したもの。短いほど光ファイバの接続位置が容易に確認できる。
[※10] 後方散乱デッドゾーン
光ファイバの接続損失が確認できる最小の距離を表現したもの。短いほど光ファイバの接続損失が容易に確認できる。