アンリツ株式会社(社長 戸田 博道)は、携帯電話端末の開発・検証用基地局シミュレータであるシグナリングテスタMD8470Aの機能を強化。中国が推進している第3.5世代高速データ通信規格である
TD-SCDMA HSDPA[※1]に対応したTD-SCDMA/HSPAシグナリングユニットMU847040B及びTD-SCDMA/GSMシミュレーションキットMX847040B、TD-HSPAソフトウェア MX847040B-13を開発。10月19日から販売を開始します。
これらのハードウェア、ソフトウェアをMD8470Aに搭載することにより、MD8470AがTD-SCDMA HSDPA方式の擬似基地局として動作し、TD-SCDMA HSDPA携帯電話端末の呼接続試験、データ通信試験が行えます。
また、本試験構成のMD8470Aに、すでに販売している第2/第2.5世代携帯電話方式であるGSM/GPRS/EGPRSに対応したGSMシグナリングユニットMU847020B及びセカンドRFユニットMD8470A-02、EGPRSソフトウェアMX847010A-01を搭載することにより、業界で初めて、TD-SCDMA/HSDPA方式とGSM/GPRS/EGPRS方式間のシステム間ハンドオーバ[※2](InterRAT[※3])試験を可能としました。
アンリツは、GSM方式とのシステム間ハンドオーバ試験まで対応した総合検証ソリューションを提供することにより、中国における第3世代携帯電話サービスの円滑な発展に貢献いたします。
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[開発の背景]
中国では、2009年1月に第3世代携帯電話サービス(3Gサービス)のライセンスが、China Mobile、China Unicom、China Telecomの3社に交付され、 3Gサービスの提供が始まっています。こうしたなか、China Mobileでは、TD-SCDMAの高速データ通信サービスであるTD-SCDMA HSDPAサービスの提供に力を入れています。
こうした動きに伴い、既存の第2/第2.5世代携帯電話方式と第3/第3.5世代携帯電話方式が混在したネットワーク状況になっていることから、通信品質を維持するために、システム間ハンドオーバ試験まで対応できる計測器のニーズが高まっていました。
アンリツは従来からTD-SCDMAに対応した各種計測器を提供しており、シグナリングテスタMD8470Aは、TD-SCDMA基地局シミュレータとして、中国内外の端末・チップセットメーカーで使用されています。
さらに今回、MD8470Aの機能強化を図り、TD-SCDMA HSDPA携帯電話端末の呼接続試験、データ通信試験から第2/第2.5世代GSM/GPRS/EGPRS方式とのシステム間ハンドオーバ試験まで含めた総合検証ソリューションの提供を可能としました。
[製品概要]
シグナリングテスタMD8470A に、TD-SCDMA/HSPAシグナリングユニットMU847040B、TD-SCDMA/GSMシミュレーションキットMX847040B、TD-HSPAソフトウェアMX847040B-13を搭載することで、TD-SCDMA HSDPA携帯電話端末の呼接続試験(位置登録・発呼・着呼・切断等)、データ通信試験(音声通話・TV電話・パケット通信・SMS/MMS等)が行えます。
また、すでに提供しているGSMシグナリングユニットMU847020B、セカンドRFユニットMD8470A-02を併せて搭載することで、TD-SCDMA HSDPA方式とGSM/GPRS/EGPRS方式のシステム間ハンドオーバ試験も可能となります。
■ TD-SCDMA/HSPAシグナリングユニットMU847040B
TD-SCDMA HSDPA方式における基地局と携帯電話端末の接続検証で必要となるハードウェアユニットです。
■ TD-SCDMA/GSMシミュレーションキットMX847040B
TD-SCDMA基地局とGSM基地局の動作を自由に定義できるソフトウェアです。 試験実行時に、携帯電話端末とMD8470Aとの間でやりとりされるプロトコルメッセージのログの取得・解析を行うことができます。
■ TD-HSPAソフトウェアMX847040B-13
TD-SCDMA HSDPA方式の試験に必要となるソフトウェアです。3GPP TS25.306[※4]に規定されるすべてのTD-SCDMA HSDPA UEカテゴリ[※5]に対応しています。
[主な特長]
■ 各種呼試験、データ通信試験が可能
TD-SCDMA HSDPA構成のMD8470Aを用いることにより、報知情報[※6]送信、位置登録、携帯電話端末の発信・切断、網側切断、ハンドオーバなどの呼接続試験、音声通話、TV電話、パケット通信、SMS/MMS[※7]などのデータ通信試験が実施できます。また、試験に使用するパラメータやシーケンスを任意に編集でき、準正常試験や割り込み試験なども行えます。
■ 1台でInterRAT試験環境を実現
実網では検証が困難な、TD-SCDMA/GSMのシステム間ハンドオーバを1台のMD8470Aで行えます。各種通信状態及びセル切り替え条件の設定・指示が可能であり、任意のタイミングでセル間移動に伴う携帯電話端末のサービス品質や接続信頼性・安定性などを容易に検証できます。
■ 安定性・再現性の高い試験環境を提供
様々な外部要因により接続環境が異なる実網に比べ、安定性・再現性の高い試験環境を実験室内に構築できます。また、試験を行っている際の無線プロトコルのログを保存できることから、不具合があった場合の解析が効率よく行えます。
■ サーバ一体型のコンパクトプラットフォーム
MD8470Aの内蔵PCにアプリケーションサーバをインストールすることで、FTP[※8]データ転送、HTTP Webブラウジング、コンテンツダウンロード、メッセージングなど、MD8470A 1台でパケット通信を利用した各種サービスの検証を行うことができます。
■ TD-SCDMA HSDPA 全UEカテゴリ対応
3GPP TS25.306 (1.28Mcps TDD HS-DSCH physical layer categories)に規定される、全てのTD-SCDMA HSDPA UEカテゴリに対応します。携帯電話端末の最高データレートの実現性検証において、十分なパフォーマンスを備えています。
シグナリングテスタMD8470A
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MD8470Aは、携帯電話端末機能試験を1台で実現する基地局シミュレータです。コンパクトサイズであり、かつユーザインタフェース用のプロセッサにWindows® operating systemを採用していることから、外部サーバや制御用PCが不要であり省スペースでの試験環境構築が可能。エンジニア一人ひとりがパーソナルな開発環境で、効率良く携帯電話端末の機能試験を行えます。
*Windowsは、Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標です。
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[対象市場・用途]
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対象市場
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携帯電話端末メーカー、チップセットメーカー、通信事業者
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用途
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・TD-SCDMA HSDPA方式携帯電話端末用チップセット・プロトコルの開発・検証
・TD-SCDMA HSDPA方式携帯電話端末の呼接続機能・通信機能・サービス機能の開発・検証
・TD-SCDMA HSDPA方式携帯電話端末のオペレータ受け入れ試験
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[ ※用語解説 ]
[※1] TD-SCDMA HSDPA
Time Division Synchronous Code Division Multiple Access
High Speed Downlink Packet Access
TD-SCDMAにHSDPA方式を取り入れた第3.5世代携帯電話方式。TD-SCDMAは、中国が推進している第3世代携帯電話方式。HSDPAは、第3.5世代携帯電話の方式のひとつで、下り(基地局から端末方向)パケット通信速度を高速化したもの。
[※2] ハンドオーバ
セル(1つの基地局がカバーするエリア)を超えて携帯電話が移動した際、会話をとぎらせることなく新たなセルの基地局へのつなぎ替えをスムーズに行うこと。
[※3] InterRAT
InterRadio Access Technology
異なる通信方式間でのハンドオーバの総称。ここではTD-SCDMA方式とGSM方式間のハンドオーバを示す。TD-SCDMAのカバー領域が狭小の場合、GSMの基地局にハンドオーバすることで通信の継続を維持する。
[※4] 3GPP TS25.306
第3世代(3G)携帯電話システムの国際的な標準化プロジェクトである3GPPが策定したUE(User Equipment;加入者が利用する端末)の通信状態や設定条件に関する規格。
[※5] UEカテゴリ
3GPP TS25.306で規定されているHSDPA方式におけるUEの変調方式やデータ速度による分類。
[※6] 報知情報
携帯電話サービスで、基地局が携帯電話端末に送信する信号。位置登録エリア情報などを含み、端末が通信を開始するために必要となる。
[※7] SMS/MMS
Short Message Service / Multimedia Messaging Service
SMSは、短い文章を送受信できるサービス。MMSは、文字メッセージに加え、音声や画像、動画の送受信も可能とするサービス。
[※8] FTP
File Transfer Protocol
ネットワークでファイルの転送を行うための通信プロトコル。