アンリツ株式会社(社長:戸田 博道)は、ベクトル信号発生器MG3700A、シグナルアナライザMS269xAシリーズの機能を強化。新たに、中国が推進している次世代移動通信 システム3GPP LTE TDD(注)に対応した3種類のソフトウェアを開発。6月25日から販売を開始いたします。
今回開発したソフトウェアは、ベクトル信号発生器MG3700A用波形生成ソフトウェアであるLTE TDD IQproducer MX370110A、シグナルアナライザMS269xAシリーズ用の波形生成ソフトウェアMX269910AおよびLTE TDDダウンリンク測定ソフトウェアMX269022Aです。
MX370110Aを使用することにより、MG3700Aで、3GPP LTE TDD仕様に準拠した基地局・携帯端末・チップセットの受信特性を評価できます。
また、MX269910A、MX269022Aを使用することにより、1台のMS269xAシリーズで、3GPP LTE TDDの受信特性/送信特性を評価できます。
中国では2009年1月に第3世代携帯電話サービスのライセンスが認可され、ネットワークの建設が活発化していますが、先進的なメーカーではすでに、次世代移動通信システム3GPP LTE TDDの研究開発に着手しています。
アンリツは、MG3700AとMS269xAシリーズで、3GPP LTE TDDへの対応を図ったことにより、中国における高速・大容量移動通信ネットワークの実現に貢献いたします。
(注):3GPP LTE TDD
3GPP LTEは、第3.9世代の移動通信システムであり、光ファイバ並の高速大容量通信を可能とする。 日本や欧米では、使用する周波数帯域を送信用と受信用に分割し、同時に送受信するFDD(Frequency Division Duplex)方式を採用しているが、 中国では、送信信号と受信信号を同じ周波数で短い時間間隔で分割し、交互に伝送するTDD(Time Division Duplex)方式を検討していることから 3GPP LTE TDDと呼ばれる。
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[開発の背景]
携帯電話システムにおけるパケットデータ通信の高速化が進展している中、100 Mbps以上という光ファイバ並みの高速通信を可能とする3GPP LTEへの注目が集まっています。
日本や欧米各国の通信事業者は、3GPP LTE FDD方式の採用を進めていますが、中国ではTDD方式の導入を進めています。先進的なメーカーでは、すでに3GPP LTE TDD仕様に準拠した基地局・携帯端末・チップセットの開発に着手しており、 初期段階で必要とされる受信特性/送信特性の評価を可能とする計測器が求められていました。
アンリツは従来から、TD-SCDMA、3GPP LTE FDDに対応した計測ソリューションを提供しています。 こうした取り組みを通して蓄積してきた技術力を3GPP LTE TDDにも展開。 今回、新たに、ベクトル信号発生器MG3700AとシグナルアナライザMS269xAシリーズで、3GPP LTE TDDの受信特性/送信特性評価を可能といたしました。
[製品概要]
■ LTE TDD IQproducer MX370110A
MX370110Aは、3GPP LTE TDD仕様に準拠した波形パターンをPCで生成できるソフトウェアです。 専用GUI[※1]で必要な設定を簡単に行え、ユーザーが任意に波形パターンを生成できます。 生成した波形パターンをMG3700Aで出力することより、基地局・携帯端末・チップセットの受信特性を評価できます。 さらに、MG3700Aの2信号加算機能を使用することにより、従来2台の信号発生器で行われていた試験が1台のMG3700Aで可能となります。
■ベクトル信号発生器 MG3700A
MG3700Aは、3GPP LTE FDD/TDD、W-CDMA/HSDPA/HSUPA、 CDMA2000 1X/1xEV-DO 、GPS、GSM/EDGE、Mobile WiMAX、 次世代PHS、ISDB-Tワンセグメントなど各種移動通信システムのデジタル変調信号を出力できます。 サンプリングレート[※2]160 MHz[※3]の任意波形ベースバンド発生器を標準内蔵しており、 各波形パターンファイルを選択するだけで様々な通信方式のデジタル変調信号を出力できます。 さらに標準で内蔵している2つのメモリにより、希望波[※4]と妨害波[※5]/AWGN[※6]など2つの信号を1台で出力可能。従来は2台の信号発生器を必要としていた受信特性試験を、1台のMG3700Aで行えます。
■LTE TDD IQproducer MX269910A/LTE TDDダウンリンク測定ソフトウェアMX269022A
MX269910A、MX269022Aは、MS269xAシリーズ用ソフトウェアです。 MX269910Aは、MX370110A同様の機能を有し、生成した波形パターンを、 オプションで提供しているMX269xA-020を内蔵したMS269xA で出力することにより、受信特性評価が行えます。 また、併せて開発したMX269022をMS269xAシリーズにインストールすることで、 3GPP LTE FDDのダウンリンクの送信特性が評価可能。1台のMS269xAで、受信特性/送信特性評価が行えます。
■シグナルアナライザ MS269xAシリーズ
表示平均雑音レベル[※7]-155 dBm、三次相互変調歪[※8]≧+22 dBmというダイナミックレンジ[※9]を有するスペクトラムアナライザ機能と 31.25 MHz(オプションで125 MHz帯域まで拡張可能)のFFT[※10]解析を可能とするベクトルシグナルアナリシス機能、 帯域内の信号を一定時間漏れなく保存できるデジタイズ機能を標準搭載した計測器です。 ホッピング信号[※11]や瞬時ノイズなど掃引型のスペクトラムアナライザでは捉えることができない現象を確認できます。 また、オプションでベクトル信号発生器を内蔵でき、1台のMS269xAで、受信特性/送信特性評価が行えます。
[対象市場・用途]
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対象市場
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基地局・携帯端末・チップセットメーカー
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用途
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3GPP LTE TDD方式の受信特性/送信特性評価
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[ ※用語解説 ]
[※1] GUI: Graphical User Interface
ユーザーが操作をおこなうインタフェースをグラフィックで表示し、マウスなどのポインティングデバイスで直感的に簡単に操作できるようにしたもの。
[※2] サンプリングレート
アナログ信号をデジタル信号に変換する際の1秒間の回数。
[※3] MHz(メガヘルツ)
周波数の単位。1秒間に100万回周波数が振動することを意味する。
[※4] 希望波
受信試験をおこなう際に、測定対象チャネルとなる信号。
[※5] 妨害波
受信試験をおこなう際に、測定対象チャネルとなる信号とは別の妨害になる信号。
[※6] AWGN: Additive White Gaussian Noise
相加性白色ガウス雑音。通信を阻害する信号を作り出すために使用される。
[※7] 表示平均雑音レベル
スペクトラムアナライザ内部の雑音レベル。
[※8] 三次相互変調歪
2つ以上の信号が相互に影響し合って発生する歪の一つ。スペクトラムアナライザ内部で 使用されるミキサの性能を現す指標の一つとして使われる。
[※9]ダイナミックレンジ
各種ひずみに影響されずに測定できる範囲。
[※10] FFT: Fast Fourier Transform
高速フーリエ変換。時間軸上の情報を周波数軸上の情報に変換する数学上の処理。
[※11] ホッピング信号
時間により中心周波数を変化させる信号。