Gain Chip(利得チップ, ゲインチップ)とは
概要
Gain Chipは、回折格子(グレーティング)などの波長選択フィルタにより発振波長を変化させることができる波長掃引光源(Swept light source / Tunable light source: TLS)に使用されます。
波長掃引光源 模式図:リトロー配置外部共振型レーザの例
Gain Chipは、対向する2つの導波路端面のうち、一方は高反射率または数%の低反射率を有し、もう一方は極限まで反射率を下げて素子外部の回折格子またはミラーと光学結合して、レーザ共振器を構成します。そのため、導波路は曲がり構造になっており、無反射側の端面ではAR(Anti Reflectance:無反射) 膜に加え、斜め導波路になって光が斜めに出射されます。その結果、スペクトルリップルは低く抑えられています。なお、片方の端面が反射特性を有しているため、反射型SOA(Reflective SOA: RSOA)と呼ばれることもあります。
また、光学利得帯域は80nm以上と幅広い波長可変範囲を実現できます。

Gain ChipのASEスペクトル

Gain Chipの波長ラインナップ
アンリツでは、OバンドからUバンドまでの外部共振器型レーザに対応したGain Chipの提供実績があります。また、ご使用の光学系に合わせて、垂直端面側の反射率はLR(Low reflectance)タイプかHR(High reflectance)タイプをご指定可能です。
アンリツのGain Chipは、小型のキャリアに搭載されたCOC(Chip on Carrier)タイプであり、お客様の光学系に搭載可能です。COCタイプは全数バーンイン(出荷前の稼働試験)を行うので、とても信頼性が高く、RoHSにも対応済みです。
特長
- 光出力:40mW以上(外部共振発振時 ※お客様の外部共振器構成に依存します)
- 波長範囲:Cバンド、C+Lバンド
(OバンドからUバンドまで選択可能)
- 低スペクトラムリップル
- COCタイプ
用途
外部共振器型波長可変光源(TLS)
外部共振型レーザ(External Cavity Laser Diode)とは、利得媒体である半導体素子の外部に共振ミラーが設置されたレーザです。さらに、回折格子(グレーティング)などの波長選択フィルタにより発振波長を変化させることができる光源を、波長可変光源(Tunable light source: TLS)と呼びます。
Gain Chip内部の導波路は片側端面では斜めになっていて反射率を極限まで抑えています。反対端面では垂直になっていて外部共振の構造により反射率を変え、外部とGain Chipの垂直端面側とで光が往復して発振します。
回折格子を用いた外部共振型レーザには、リットマン型(Littman)とリトロー型(Littrow)があります。
リトロー型では、回折格子の1次回折光を直接半導体レーザにフィードバックし、低反射膜(LR)を施した垂直端面側と共振させ発振します。回折は1度だけなので、リットマン型より大きな光出力が得られます。
一方リットマン型では、回折格子の1次回折光をミラーで反射させることでGain Chip内にフィードバックし、高反射膜(HR)を施した垂直端面と共振させ発振します。レーザは回折格子で2度回折するため、波長選択性が高い反面、出力が制限されます。

リトロー型

リットマン型
リトロー型とリットマン型の外部共振型レーザの例 模式図
外部共振型レーザは、光通信システムの信号光源となる波長可変レーザアセンブリ(ITLA: integrable tunable assembly)にも使用されています。

ITLA内部構造模式図
Siフォトニクス波長可変光源
100Gbpsを超える伝送システムでは、超高速デジタル信号処理を取り入れた光デジタルコヒーレント通信が用いられます。偏波多重および振幅位相変調を用いた複雑な構成になり、高度な光集積技術が必要になる一方、デジタルコヒーレントトランシーバの小型化が求められます。そこで注目されているのが光導波路、光変調器、波長フィルタなどを備えたSiチップを用いたシリコンフォトニクス技術です。シリコンフォトニクスでは、反射型SOA(Reflective SOA: RSOA)のGain Chipを利得媒体として使用します。

Siフォトニクス 模式図
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