高コヒーレンスな1550nm波長掃引光源の販売を開始
2020/08/26
アンリツ株式会社(社長 濱田 宏一)は、センシング[※1]用光源として、産業・医療・インフラ/プラント計測など幅広い分野で利用できる1550nm帯波長掃引光源AQA5500P(掃引周波数1.25kHz)、AQB5500P(同150Hz)を開発し、8月26日から販売いたします。
今回商品化した波長掃引光源は、単一の狭線幅の縦モードをモードホップ[※2]を抑制して掃引できるため、位相連続でかつ高コヒーレンス[※3]な波長掃引光が得られます。本波長掃引光源をOFDR[※4]などの光干渉法による測長計測に用いれば、広い範囲を高精度で測定することができます。AQB5500Pは、100m以上のコヒーレンス長も実現できるため、測定距離範囲を100m以上まで広げることができます。
そのため眼科OCT装置や薄膜の膜厚計側のみならず、FA分野における形状計測や、インフラ・プラントなどの大型構造物のOFDRを実現します。
開発の背景
近年、レーザ光の可干渉性を利用した光計測法のひとつであるOFDRがさまざまな分野で応用され始めています。高精度形状測定、薄膜の膜厚測定、微細構造形状計測などの分野では実用化が進んでいます。
これらの分野に向けて、アンリツはMEMS[※5]技術によりkHzオーダの高速波長掃引が可能で波長掃引幅が広く、高コヒーレンスな波長掃引光源を開発しました。
製品概要
アンリツの波長掃引光源は、単一の狭線幅の縦モードを位相連続で、かつモードホップフリーで波長掃引しています。高コヒーレンスな本波長掃引光源をコアデバイスとして、干渉計、受光器、A/Dコンバータ等を組み合わせることにより、従来よりも広い測定範囲を高速かつ高精度に測定できるOFDR測定器を構築することが可能となります。
波長掃引光源についてもっと詳しく
OFDRについてもっと詳しく
対象市場・用途
- 対象市場
- FA/医療/インフラ/プラントにおける測長・測距、形状計測
- 用途(例)
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- 測長・測距、形状計測
- FA分野:産業用OCT、精密計測・検査(膜厚、加工物の形状、バリ、傷など)、振動計測(リアルタイムな測距)、外乱存在下(スパーク等)での測距、対象物から離れた場所からの測距
- 医療分野:医療用OCT、ファイバセンシング
- インフラ/プラント分野:大型構造物の形状、変位、ファイバセンシング
用語解説
- [※1] センシング
- センシングとは、光、超音波、エコー、X線などを用いて離れたところにある対象物の物理量を定量的に測定する技術。代表的な産業用光センシングの例として、サーモビュアによる表面温度測定や、光を対象物に照射しその反射光の波長や時間差から対象物までの距離を測定するものがある。
- [※2] モードホップ
- レーザ発振中に、発振縦モードが偏移する現象。振動、衝撃、レーザの駆動電流や温度の変化などが原因で起こる。OFDRでは、サンプリング中にモードホップが発生すると、算出されたスペクトラムのS/Nが劣化し、測定精度低下を引き起こす。
- [※3] 高コヒーレンス
- 高コヒーレンスとは光の可干渉性が高い(コヒーレンス長が長い)ことを示す。
- [※4] OFDR(Optical Frequency Domain Reflectometry)
- レーザ光の可干渉性を利用した光計測手法のひとつ。レーザ光の出射位置から測定対象点までの距離を非接触かつ高精度に計測できるため、近年ではさまざまな分野で応用されている。
- [※5] MEMS(Micro Electro-Mechanical Systems)
- 機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に微細加工技術によって集積化したデバイス。