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グループCEOメッセージアーカイブ-2025

“はかる”力で応える社会課題への挑戦

通信計測に次ぐ事業基盤の確立へ。
第二・第三の柱を育て、安定的な成長と社会課題の解決を両立

通信計測事業の業績変動を支える、多様なポートフォリオの実現へ。
6Gと3つの新領域ビジネスへの挑戦で、社会課題に応える技術ソリューションパートナーとしての進化を続けます。

2024年度レビュー:オールアンリツとしての実力を発揮

2024年度は、主力の通信計測事業のモバイルビジネスが、5Gと6Gの端境期に入り、業績への貢献度が限定的である状態でスタートしました。そのような中、生成AIの爆発的な普及で、通信計測事業のもう一つの柱であるデータセンター関連のビジネスが急成長しました。しかしながらモバイルビジネスの停滞を補うまでには至らず、通信計測事業としては、減収増益という結果になりました。
一方で、全社としては最終的に増収増益を確保することができました。これは、通信計測事業以外のPQA 事業、環境計測事業、そして、センシング&デバイス事業の成長によるもので、オールアンリツとして、その実力を発揮できた1年であったと自負しています。

 

私は、2018年の社長就任時から特定の市場サイクルに業績が大きく左右される体質に強い危機感を持っており、変革する必要があると考えてきました。そこで、最初の一手として、これまで子会社に分散していた事業構造の見直しを進めました。
2024年度、好業績であったPQA事業は、かつて子会社として切り離していました。しかし、それでは全社のリソースを十分に活かすことができず、市場の変化に柔軟に対応する体制にはなり得ません。そこで、2021年に本体に統合し、人的・資金的リソースを集中的に投下することで本格的な成長戦略を始動しました。
PQA事業が対象とする食品の品質保証・異物検査の市場は、通信計測事業のモバイル市場に比べ、安定成長が見込めます。また、当社のグローバルな市場シェアは10%程度であり、シェアを拡大するポテンシャルがあります。現状、米国においては、昨今の人件費高騰に伴う省人化・自動化のトレンドの高まりで、大手企業との取引が拡大しつつあります。これは、長年にわたる地道な提案活動の結実です。グローバル展開をさらに加速させ、PQA事業が、当社の柱になることを期待しています。

 

通信計測事業においては、2027年度後半から需要が出ると予想される6Gビジネスに期待しており、そのための準備を粛々と進めています。しかし、6Gの需要が立ち上がるまでの数年間も成長できる土台づくりが必要です。2024年度の成果はその第一歩であり、今後さらなる飛躍に向けて準備を整えていきます。

2030年度 売上高2,000億円企業に向け 社会課題に技術で応えるソリューションパートナーへ

「2030年度 2,000億円企業を目指す」――この目標は、現状の延長線上には存在しません。これまで当社を支えてきた通信計測事業のモバイルビジネスの成長性がゆるやかになる中で、新しい成長戦略が求められています。この目標達成に向けて、中期経営計画GLP2026では「産業計測」「EV/電池」「医薬品/医療」という3つの新領域ビジネスを成長の柱として位置付けています。

 

産業計測分野:通信計測事業の汎用計測器が主なソリューションとなります。当社は、当該ソリューションを主に通信分野のお客さまに向けてビジネスをしてきました。しかし、産業計測分野はすそ野が広く、例えば、自動車関連のお客さまにもソリューションとして提供できます。現状は、競合企業に圧倒的なシェアを握られていますが、アジアを中心に市場の構図が変化してきており、今まさに再挑戦の好機を迎えています。汎用計測器は、基礎研究において活用される場面が多く、大学や研究機関との関係性強化を通じて、次世代の顧客基盤づくりを進めます。さらに、創業から130年、通信分野の最先端を追求してきた当社の歴史や技術力をブランド価値として活かし、新たな展開を仕掛けていきます。

 

 EV/電池分野:アンリツは、2022年に、電力制御技術に強みを持つ(株)高砂製作所を当社グループに迎え入れました。そして、2025年4月、電力計測技術を有するオーストリアのDEWETRON社を当社グループに迎え入れるデシジョンを行いました。(株)高砂製作所は、高性能な電源装置の開発・製造に強みを持ちますが、製品はあくまで「電源」そのものです。DEWETRON社は、電流や電圧といった電力を「測る」技術に長けており、特にEVやHEVの駆動部の計測や電池関連の計測において世界的なプレゼンスを持っています。両社のソリューションを組み合わせ、アンリツは「電源の出力」と「電力計測」の両面をカバーするトータルソリューションを提供していきます。また、課題である海外展開は、DEWETRON社が有するグローバル市場への販売ネットワークと同社の国際的なブランド力を活かすことで、(株)高砂製作所の製品を世界に届ける道筋もひらけます。

 

医薬品/ 医療分野:食品検査で培った知見を生かし、安全・安心のニーズに応える新製品を展開していきます。医薬品市場では、より高度な品質検査への投資意欲が高く、当社のソリューションとの親和性も極めて高いと感じています。今後は販路拡大のために外部パートナーとの連携も含め、確実な成長領域として育ててまいります。

 

そしてもう1つ、2025年3月フランスのSmartViser社の株式を32.72% 取得し、同社との協業体制をさらに強化するデシジョンを行いました。同社が保有する端末組込型ソリューションは、スマートフォンに搭載することにより、当該スマートフォンの基地局との通信状態をモニタします。当社のモバイル試験ソリューションと組み合わせることで、スマートフォンの通信を制御しつつ、その時の通信状態をモニタする試験ソリューションの構築が可能となります。この新たなソリューションにより、従来の「ハードウェアとしての計測器の箱売り」から「ソフトウェアによる計測の提案」へと、ビジネスモデルを転換していきます。
これは単なる製品ラインナップの拡充ではなく、私たちの計測文化そのものを変革する一歩です。計測を「どのように実現するか」をお客さまとともに設計・提案する。そのプロセスを通じて、これまでにない付加価値を届けられると考えています。アンリツは、単なる装置メーカーではなく、社会課題に技術で応えるソリューションパートナーとしての役割を担っていきます。

GLP2026 6Gと3つの新領域ビジネスと進捗

技術の裾野を広げ、 多様な人材の学びと挑戦を支える

テクノロジー企業であるアンリツにとって、最も重要な経営資源は人材です。技術力は一朝一夕で築けるものではなく、現場での経験や蓄積によって初めて真価を発揮します。だからこそ、社員一人ひとりの学びと成長を全力で支える環境を整えることが、企業としての持続的成長に直結します。
近年、私は社内に対してある種の危機感を抱いています。モバイルビジネスにリソースを集中した結果、専門性がモバイル技術に偏ったエンジニアが増えてしまい、例えば有線や光関連技術への転換が困難なケースが顕在化してきました。今、私たちは社員が専門性にとらわれず、常に新しい知識を取り入れ、視野を広げていくための仕組みづくりに注力しています。
例えば、新入社員は入社後3年間、さまざまな領域の製品開発プロジェクトで経験を積み、基礎スキルを身に付ける機会を与えられます。複数領域の知識、経験を持つことは非常に重要で、ここで身に付いた「仕事のやり方」が基盤となり、今後、新たな領域にも対応できるエンジニアが育っていくことを期待しています。
また、グローバル化に伴い、海外子会社やM&A 先との協業が進む中、多様な価値観を受け入れる姿勢や心理的安全性の確保がますます重要となっています。当社では、誰もが安心して意見を言える風土づくりに努め、失敗を恐れず挑戦する文化を醸成しています。
人材戦略に終わりはありません。常に進化し続ける市場に対応するため、今後も学びの場を拡充し、多様な人材がそれぞれの強みを活かせる職場づくりを進めていきます。

経営の質を高めながら社会課題の解決に挑む

経営において何より重要なのは、「質」を高め続けることだと私は考えています。経営環境が複雑化し、変化のスピードが増す今、制度や仕組みの整備だけではなく、その運用の中身、すなわち“経営の質”そのものをどう高めていくかが問われています。
社外取締役のメンバーには、形式的なチェック機能を超えて、戦略的思考をもった対話のパートナーとしての役割を期待しています。当社では近年、経営の重要論点に社外取締役が積極的に関与し、多面的な問いや示唆を通じて、経営陣が論点を深掘りする場面が増えています。彼らは他社での豊富な経験をもとに、当社の延長線上にはない視点をもたらしてくれる貴重な存在です。特に事業ポートフォリオのような、社内で正解を出しにくい領域では、その意味はなおさら大きいと実感しています。こうした対話の積み重ねが、企業としての深みと広がりをもたらす原動力になっています。
こうしたガバナンスの深化は、ESG経営にも直結します。当社では「PGRE 30」をはじめとするサステナビリティ目標を明確に掲げ、気候変動対応や自家発電比率の向上にもトップマネジメントが先頭に立って取り組んでいます。今年はさらに、SDGsをいかにビジネスに取り込むかをテーマに掲げています。例えば、古い製品の回収・リサイクルや、製品開発の際に社会的役割を定義し、それを営業現場まで共有する仕組みなどがその一例です。重要なのは、SDGsを「外から与えられる目標」と捉えるのではなく、自社の強みと照らし合わせながら、“どう貢献できるか” を自ら定義し、そこにリソースを投下していくことです。ESGを経営の制約条件ではなく成長機会ととらえ、アンリツは今後も技術と誠実さで社会課題の解決に取り組んでいきます。

「あってよかった」と思われる企業を目指して

アンリツの使命は、「はかる」技術を通じて社会の課題に応えることです。通信、医療、食品、エネルギーなど、私たちの技術が関わる分野は年々広がっており、それだけ社会的責任は大きくなっています。私たちはこれからも、技術の力でより良い社会を築いていくという信念のもと、ステークホルダーの皆さまと誠実に向き合い、対話と共創を重ねてまいります。社会とともに歩む企業として、持続可能な未来の実現に貢献すると同時に、「アンリツがあってよかった」と日本や世界に思っていただけるような存在を目指します。今後とも、皆さまのご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

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