グループCEOメッセージアーカイブ-2024
“「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。” 2030年度に2,000億円企業となるため、アンリツは進化し続ける
アンリツを貫く価値観
アンリツが重視する価値観は、先端技術を追い求めていくことです。新しい技術は未熟で多くの課題があるため、これを克服して発展を支えることが測定器の役割だと考えています。これが私たちの「はかる」技術の価値です。
しかし、アンリツのコンピテンシーである「はかる」技術は、市場の成熟とともに需要が減少する宿命にあります。アンリツが生き残るためには、先端技術をいち早くキャッチし、先端技術が広く普及するのをサポートすることが重要です。私たちが長年培ってきた「はかる」技術は、常に最先端へとシフトしてきました。新技術の迅速かつスムーズな普及を支援することが、アンリツの使命だと考えています。
アンリツが取り組む市場とその環境認識
これまでアンリツは、モバイル通信計測分野を選択して投資を集中し、そこで大きく成長することを目指してきました。しかし、この戦略には2つの問題点がありました。1つ目は、モバイル通信市場が非常にボラタイルであるため、事業の安定性に欠けるということです。この結果、業績が上がるときもあれば、ジェットコースターのように急降下するときもありました。この変動は、ステークホルダーや従業員のモチベーションにも大きな影響を与えます。業績が良いときには「良い会社だ」と評価されますが、低迷すると評価も下がり、再び上向くまでには時間がかかります。安定した右肩上がりの成長を目指すためには、このボラタイルな状況を改善する必要があります。2つ目は、モバイル通信計測市場に集中することが、限られたニッチなマーケットへの依存につながることです。また、競合が少ない市場であるため、シェアを拡大するためにシェアの奪い合いが起き、非常に厳しい戦いとなります。このような状況では、売上の成長も限られてしまいます。
通信計測事業の市場は、技術の進化とともに繰り返される投資サイクルが特徴的で、4Gから5G への移行に投じられた投資と同じような大規模投資が6G への移行でも想定されています。現在、このモバイル関連の通信計測市場規模は約2,000億円に達しており、当社を含む主要2社がその大部分を占めています。
興味深いのは、3G、4G、5Gといった各世代の移行に伴う投資規模がほぼ一定であることです。これは、携帯電話事業者が得た収益を再投資することで、スマートフォンメーカーや関連企業に資金が循環するからです。加入者が増加しても、デバイスの価格が下落するため、設備投資に回る資金は相対的に一定のままであり、投資額自体は大きく変動しません。一方、通信計測器の開発には積み上げられた技術的な専門知識や大規模な設備が必要であるため、新規参入が難しく、既存企業が市場シェアを維持しやすい状況であり、安定的なビジネス展開が可能となっています。
通信計測事業は、常に先端技術を取り込むことでビジネスを進めてきました。通信技術が進化し続ける中で、アンリツはその測定の専門家として活動してきました。しかし、この状況がいつまで続くかは不透明です。例えば、コンピューターは先端技術として長らく進化してきましたが、現在ではコモディティ化しており、最新技術への需要は減少しています。スマートフォンも同様で、最新鋭の機能への需要が低下してきています。技術がコモディティ化すると、測定の機会が減少し、事業の継続性が危ぶまれます。次なる技術分野を常に探し続ける必要があり、自動車や食品など、異なる分野での測定ニーズを模索しています。
アンリツが生み出す将来価値
アンリツが成長するためには、「はかる」という当社のコンピテンシーをより広い市場に適用し、可能性を広げていくことが必要です。私は、「はかる」という技術はもっと広範な領域で活用できると信じています。“「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。”というメッセージには、人間の限界を超えるような過剰な努力を強いるのではなく、これまでの固定観念を取り払い、新たな市場に挑戦するという意味を込めています。自分たちが限界だと思い込んでいたものを見直し、可能性を広げることで、新たな成長の道を切り開いていくのです。アンリツは、計測の技術を基盤にしつつも、その応用範囲を広げ、持続的な成長を目指していきます。これが、これからのアンリツのビジョンです。
アンリツの強みは、技術者集団としての能力にあります。ハードウェアとソフトウェアの両方の振る舞いを理解し、新たな規格に追随していく能力があり、自社で製品を企画・製造できる点が特長です。新しい技術や製品を実現化する能力には自信があり、そのための方向性さえ明確にすれば、どんな製品でも作り上げる力を持っています。こうした技術力と製造能力を活かして、未来の計測ニーズに応えていきたいと考えています。
一方、課題は「はかる」ことに特化して市場を支えることはできても、自ら市場を創出することが難しい点です。例えば、スマートフォン市場はチップセットベンダー、端末ベンダーおよび通信事業者等、当社の多くのお客さまによって形づくられていますが、アンリツはその市場を創出することはできません。そのため、成長する市場を探索し続ける必要があります。
アンリツが進化し続けるために必要なこと
GLP2023振り返り
GLP2023は、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻など多くの外部要因に加え、5G関連の投資のピークが予想よりも早く、2020年ごろにピークを迎え、その後右肩下がりになったことの影響が大きく、連結売上高1,400億円という目標は未達となりました。一方、5G関連の投資のピークを2023年と予想し、ピーク後の成長戦略を描いていたことから、新領域のビジネスを前倒しで進めることができました。その効果は当初の予定より1~2年早く出てくると想定しています。
GLP2026、そしてその先へ
GLP2026では、あらためて連結売上高1,400億円という目標を立てています。
通信計測事業は、市場規模を考えると800億円は達成可能と考えており、そこからさらに、横への展開やM&Aの活用で新領域を開拓することで100億円伸ばした900億円を目標に掲げています。この3年間で右肩上がりを実現し、その後6G への対応で成長を加速させることが、通信計測事業の2030年の目標として掲げる1,100億円を達成するための道筋だと考えています。
PQA事業については、右肩上がりの成長を続けているものの、利益率が課題です。現在主力としている食品に加え、医薬品にも領域を広げていきますが、医薬品にはさまざまな参入障壁があるため、そこを超えて参入を加速するためのM&Aも検討しています。
このような背景から、経営戦略部門に優秀な人材を集中させて成長戦略を進め、短期間で成果を出す仕組みを作り上げました。M&Aを通じてビジネスを前進させ、企業全体の成長を目指しています。市場を見つけた後は、その市場にいるプレーヤーにアプローチすることが重要です。ただし、適切なタイミングに新製品を投入するということは簡単ではなく、技術の発展を見越して市場が必要とする前に必要とされるであろう新製品をいかにうまく開発するかということが成功の鍵となります。この予測を担うのがCTOである野田と先端技術研究所であり、新技術の調査と予測を行っています。
タイミングを逃した場合は、M&Aを活用して市場への参入を加速する戦略を取っていきます。市場の変化を敏感に察知し、柔軟な戦略を採用することは、企業の生き残りにとって極めて重要です。M&Aのタイムスケジュールを考えると、1~2年という時間はあっという間に過ぎてしまいます。GLP2026は、GLP2023で育てた新しい目を事業の柱に成長させるステージであると認識しています。
GLP: Global long-term management plan
成長を支える人材戦略
アンリツにとって、最も大切な資本は人材です。人材戦略を考える際に私は、「2030年を見据えて考える」「グローバルで考える」という2点を指示しました。
これまでアンリツでは、事業部単位のOJTで人材を育成してきましたが、過去の延長では2030年度 2,000億円には届きません。例えば、EV/電池計測の事業を強化する際に、必要な知識を持った人材がいなければその分野での成長は困難です。そこで新たな挑戦のために必要だと考え、2024年4月に社内教育機関「A-SKILLs」を設立しました。内部および外部の講師を招いて知識を伝授する仕組みであり、修了証書を受け取るまでの体系的な教育を行います。社内で基盤となる人材を組織的に育成することが目標です。具体的には、測定の原理や競合に対する当社の優位性など、売るための知識を身に付け、顧客の質問に的確に答えるためのロールプレイングも行います。外部講師に限らず内部のエンジニアも活用し、高いスキルを持つシニア層の人材からの知識伝承も行っていきます。
また、2030年度 2,000億円の目標を達成するために必要な人材配置を考慮した人材戦略も策定しました。以前は各事業部に必要人員数を聞いていましたが、2030年度の目標に基づき、必要人員数やスキルを逆算して採用・教育計画を立てています。初めての試みですが、目標達成に向けて進めています。
評価制度の改革も念頭に置いています。学んだ人には試験を実施し、スキルの取得を、履歴に記録するとともにスキルを活かした活動がきちんと評価される仕組みを考えています。経営者として人材に求めるスキルセットや人材ポートフォリオの観点からも重要な要素です。
さらに、当社のさまざまな事業の製品知識を学び、クロスセールスや協業を推進することで、全体の競争力も高めていきたいと考えています。
サステナビリティ経営で目指す未来
サステナビリティに関しては、単に「やっています」的な取り組みを避け、会社と社会の利益のために本質的な活動を重視してきました。これまでは事業とサステナビリティの取り組みに距離があったのですが、今後の3年間で事業にサステナビリティを統合することを目指しています。具体的には、自社製品のプラスチック使用削減や再利用の促進など、循環型経済の実現に向けた活動に注力していきます。
製品の再生可能性を高めるためには、廃棄物の回収システムの構築が必要です。この取り組みには顧客からの製品回収も含まれ新しい挑戦となります。アンリツには廃棄された部品を再利用することで、売上を上げている部門があり、これらをうまく連携させます。また、サプライチェーンにおいても、同様の意識を持つパートナーと連携することで、質の高いサービスを提供できるようにすることを目指しています。これにより、サステナビリティと事業の両立を図り、企業価値を高めていく計画です。
温室効果ガス排出量削減のためには、「Anritsu ClimateChange Action PGRE 30」を掲げ、自家発電を推進しています。カーボンニュートラル社会の実現を目指し、多くの企業が再生可能エネルギーを活用しようとしています。自然エネルギーの電力を調達する方法には、設備投資が不要な「自然エネルギー由来の証書」を購入する方法もあります。アンリツは、本当の意味での持続可能なエネルギー利用を目指し、自社敷地内での発電を進めており、自家発電比率は10.4%になっています。2030年までにこの比率を30%程度まで上げることを目標としています。
ステークホルダーの皆さまへ
2030年度に2,000億円規模の企業になるためには、社会からの認知度と信頼を高めることが必要です。アメリカ、ドイツ、日本には優れた測定器会社があり、これが技術力の基盤となっています。アンリツも、日本の技術力を支える重要な測定器の会社として認知されることを目指しています。例えば、半導体の製造では日本の技術が多く使われていますが、アンリツもそのような会社と同様に欠かせない存在であることを広く認知させたいと考えています。2030年には、アンリツがいなければ困るという認識を社会全体に広め、存在意義を明確にすることが目標です。
2024年度は、GLP2026のスタートの年です。GLP2023の3年間の反省と新たにまいたビジネスの種を活かし、次の3年間でしっかりと成長するビジネスに育てたいと考えています。この過程を従業員やステークホルダーの皆さまと共有し、着実に実行して培った力を具現化し、ステークホルダーの皆さまに理解していただきながら、2030年度 2,000億円を目指していきます。