AI/ML手法を用いた信号モニタリング技術
6Gにむけた帯域内全二重通信への応用
6G時代に求められる周波数利用効率のさらなる向上を実現する技術として、複数の通信を同一周波数で同時実行する帯域内全二重通信方式(IBFD, In-band Full-duplex)が研究・検討されています。 その実現には、高精度な信号間干渉状態のモニタリングが不可欠です。
アンリツでは、その実現を目的として 教師なし機械学習 による信号分離・推定アルゴリズムを搭載し、エリア内の干渉状態を観測する「干渉モニタリング装置」を開発しました。
帯域内全二重通信による周波数利用効率の向上
帯域内全二重通信とは、基地局(BS)が相互干渉しない2台の端末(UE)を選択して、その一方からのUL信号を受信しながら、同時にもう一方へのDL信号をを同一周波数帯で送信することで、周波数帯域を有効利用する方式です。
既存のTDD方式(時分割多重)の場合、一つの周波数帯域を複数の端末が時分割で利用するため、周波数帯域当たりの伝送容量を複数の端末で分け合う形になります。帯域内全二重方式では、さらに空間的な分割を組み合わせることで、理論的には伝送容量の総和を2倍にすることができます。
この帯域内全二重通信の動作シーケンスは次のとおりです。
- 干渉モニタリング装置でエリア各所の干渉情報を観測し基地局へ通知する
- 干渉モニタリング装置でエリア各所の干渉情報を観測し基地局へ通知する
- 基地局はこの干渉情報を基に帯域内全二重通信が可能な端末の組を選出し適切なスケジュールで実行する
- エリア内の信号源(UEやBSなど)の数、位置、信号強度など、干渉モニタリング装置から通知された情報に基づいてターゲット端末選出とスケジューリングの最適解を導き出します。
- 基地局は自己干渉キャンセル機能によってUL信号に混信する自己干渉を除去する
- 基地局はDL信号を送信しながら同時にそれをサンプルし、受信するUL信号に混信するDL信号の成分を除去して、UL信号を正しく受信できるようにします。
アンリツが開発した干渉モニタリング装置によって各所の信号をモニターし、AI/ML手法を用いた信号分離、到来方向推定、信号強度推定を行うことで、確度の高い情報をBSに通知することが可能になります。
AI/ML手法を活用した干渉モニタリング装置
複数の信号源から到来する混在したOFDM信号を解析し、それぞれの信号の各所における強度や到来方向などの情報を獲得し、基地局に通知します。
この干渉モニタリング装置は、次のような手順で受信した複数混在波から干渉情報を生成します。
- アンテナ各素子ごとの受信信号を取得する
- 各素子の受信信号をマルチチャネル受信器の個別のチャネルに入力します。
- IF周波数帯へダウンコンバートする
- Sub6GHz帯と高SHF帯で共通のIF周波数帯に変換します。
- アナログ信号をデジタル信号に変換する
- 以降の信号処理のためにデジタル信号データに変換します。
- ICAやクラスタリングなどのAI/ML手法によって混在する複数の信号を分離する
- 時間領域の信号情報を周波数領域に変換した後にICA(独立成分分析)によって信号成分を分離します。
- 分離した各信号の強度と到来方向を推定する
- 分離された信号成分を解析して、それぞれの信号強度と到来方向を導き出します。
- 干渉情報を出力および可視化する
- 干渉情報を生成・出力するとともに、チャート・グラフ等の表示・出力を行います。
今回開発した干渉モニタリング装置の概観および諸元は次のとおりです。
概観

受信部 主な仕様
| SHF帯 |
27.5~29.5 GHz |
| Sub6G帯 |
3.6~4.1 GHz(3.7 GHz帯)
4.4~4.9 GHz(4.7 GHz帯)
|
| 入力レベル |
-10~-60dBm(平均パワー) |
| IF信号出力 |
369±100 MHz |
| S/N比* |
> 125 dBc/Hz(Sub6G帯)
> 120 dBc/Hz(SHF帯)
|
*信号平均パワーと1 Hz当たりの雑音パワーの比@RF入力平均パワー-40 dBm以上にて
デジタル部 主な仕様
| サンプリング周波数 |
983.04MHz |
| I/Q信号帯域幅[MHz] |
200MHz
DDC出力(245.76 MSample/s)
|
| ADC分解能 |
14bit |
研究トピックス
本記事には、総務省の「第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発(JPJ000254)」によって実施した成果を含みます。
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