光デバイス製品ができるまで
アンリツデバイス*1では、光長距離通信に使われる励起用半導体レーザ、データ通信に寄与するゲインチップやアンプ(増幅素子)、さらにはガス検知やセンシング用途の光源など特徴ある世界最高水準の光デバイス製品をラインナップし、「より安く、より早く、より安定してご提供する」をコンセプトに製造しております。
今回は、それら光デバイスの製造プロセスにスポットをあててご紹介します。
*1:「アンリツデバイス」はデバイス製造をしている製造会社名
アンリツデバイスでは、化合物半導体であるInP(インジウムリン)またはGaAs(ガリウム砒素)をベースとした光デバイス専用のクリーンルーム(約2500m2)で製造しています。同一の建屋内で最上流のウエハ成長プロセスから組立、検査、出荷までを一貫して行うことで、コミュニケーション性に優れた生産体制を維持し、お客様のご要望に柔軟に対応させていただいております。

図1 光デバイスを製造するクリーンルーム
製造プロセスの概要
①ウエハ成長~電極工程
MOVPE装置(薄膜成長に適した半導体結晶成長装置)を用いた高精度の結晶成長技術により、理論設計に基づいた化合物半導体の複雑な多層膜構造を作製しています。この化合物半導体多層膜により高性能な各種光デバイスを高安定に実現できています。

図2 ウエハプロセスの概要

図3 MOVPE装置(反応管)
②チップ加工~チップ組立工程
ウエハをバー状にへき開してレーザに必要な共振器構造を作製し、反射率調整と保護膜形成を目的に端面にコーティング膜を施しています。その後、チップ単体へ分割して(図5)、品種別に専用設備となっているチップテスター(図6)で光出力などの静特性を全数評価し良好な特性のチップを自動で選別処理しています。

図4 チッププロセスの概要

図5 分割したチップ

図6 チップテスター

図7 自動ボンディング装置
組立工程では自動ダイボンダー(図7左)、自動ワイヤーボンダー(図7右)を用い、4μm程度の高位置精度で安定した組立を実施しています。
完成した製品は全数エージング試験を実施して初期不良を取り除き信頼性を確保しています。最後に特性検査と外観検査を実施してモジュール工程に供給しています。
③モジュール組立工程
アンリツデバイスのモジュールは、品質の安定化と低コストを目的に部品の共通化を図りプラットフォーム化されています。多種の回転軸を有するスカラロボットにより、レーザダイオード、フォトダイオードなどをチップキャリア・PD自動組立装置(図9左)で基板上に実装します。その後、モジュール内部にペルチェ素子と先の基板をペルチェ・基板自動搭載装置で実装し、レンズ・アイソレータをレンズ調芯固定装置(図10)で自動組立して、乾燥窒素を封入してシーム溶接を行います。

図9 ペルチェ・基板自動搭載装置

図10 自動レンズ調芯固定装置(内部)
最後にファイバ調芯固定装置(図11)で光ファイバに高い結合効率でYAG溶接しカバーを取りつけて完成します。
光ファイバの固定後は、恒温槽、熱衝撃槽を用いて応力緩和と接合異常が無いこと、安定した出力が得られること等を確認した後、検査工程に供給しています。

図11 自動ファイバ調芯固定装置
④検査工程
組み立てが終了した完成品モジュールは検査工程で品質と特性の確認を実施します。
エージング装置(図12)による連続通電試験で工程内での潜在的な不具合の無いことを確認します。そして専用の自動特性検査装置(図13)で光出力、光スペクトル特性などの主要特性を検査し、合格した製品を梱包しお客様に納入いたします。

図12 エージング装置

図13 自動特性検査装置
⑤評価設備
高い信頼性を維持するために、様々な評価設備で品質維持に努めています。
走査型電子顕微鏡やX線解析装置をはじめ、ボンディング品質を確認するためのダイシェアテスター、ワイヤープルテスタ―、グロスリーク、ファインリーク試験機、溶接の接合強度を評価する引張試験機、耐環境特性を評価する熱衝撃試験装置(図14)、半田接合界面のボイド評価のための超音波顕微鏡(図15)など、多種多様な評価設備を活用しています。

図14 熱衝撃試験装置、他

図15 超音波顕微鏡(接合面評価)
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