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デバイス開発ヒストリー

デバイス開発ヒストリー

光デバイス(3)~各個別デバイスの進歩~

今回は当社が保有する主要な光デバイスの開発ストーリーを紹介していきます。

1. Pump-LD

光デバイスの自社生産を始めた当時、半導体結晶の作成には前回紹介した液相成長炉とよばれる装置で製造していました。この時作成していたLDの断面構造を下左図に示します。この構造は活性層であるInGaAsP(インジウム・ガリウム・ヒ素・リン)周辺の埋込み層を厚くできることから、高出力化に適していました。当時としては世界最高レベルの光出力が得られ、国際学会でも報告しました。

1980年代末に光ファイバのコア部分に希土類元素であるエルビウム(Er)を添加したことより、1.55 µm光の直接増幅が報告されました。この増幅器は励起光源として1.48 µm半導体レーザが使用可能であり小型低価格のため、一気に普及し今日の高速大容量通信の発展に多大な貢献をしました。当社でも1990年代初頭に得意の高出力LD技術を用いて、光ファイバ出力50 mWの励起用LD(Pump-LD)をリリースしこの市場に参入しました。その後このLDは当社の主力製品に発展しました。

1990年に気相成長装置が導入され、結晶成長プロセスが変更されたことなどに伴い、現在では下右図のように構造が大きく変更されました。基板の半導体タイプ、活性層のエッチング形状、クラッド層、および素子サイズなど設計が一新されました。

出力を向上させるには素子長を伸ばすとともに、活性層が薄くなるように構造を調整していく必要があります。このとき活性層下のクラッド層に、InPに近い組成で構成されるInGaAsPの4元層を挿入する4元クラッド構造により、性能が飛躍的に改善しました。通常、光分布は上下対称形状となりますが、この構造では下右図のように、屈折率が高い基板側に光分布が偏っているため、非対称となることが画期的でした。これにより素子長の延長、活性層幅の拡大が可能になり、出力向上に大きな貢献をしました。開発当初300 µmだったLD素子長は、現在数mmにおよんでいます。研究的には素子出力1Wを超えるようなものを学会でも発表しました。一方、光源出力が上がるに伴い測定器に使う受光器の樹脂部品が熱で変形したり、黒い紙やフィルムに穴が開いたり、またうっかり指を入れると火傷しそうになるなど危険を感じることもありました。このようにPump-LDに関して、当社は常に世界のトップクラスの性能を維持し続けています。現在、最高出力の製品は光ファイバ出力650 mWと、初期の10倍を超えるレベルにまで到達しています。それを実現したのは、数原子層の非常に薄い半導体層を複数積み重ねる量子井戸構造と、それを実現した結晶成長装置の進歩、および革新的な構造の導入といえます。

初期のLDの断面構造
初期のLDの断面構造
現在のPump-LDの断面構造
現在のPump-LDの断面構造

2. DFB-LD

Pump-LDに代表される一般のLDは複数モードからなる波長で発振しますが、光通信の光源に用いられるLDは完全に単一の波長で発振する必要があります。そのために素子内部に特定の波長を選択する機能を持つ回折格子を内蔵した、分布帰還型レーザ(DFB-LD)と呼ばれるLDが開発されました。回折格子というのは周期的なスリットまたは微細な凹凸パターンを形成することで、周期間隔に応じて回折と干渉による干渉縞を作成するための光学素子です。(a)図はこのパターンを作成するために用いる干渉露光系です。光源であるアルゴンレーザの出射ビーム系を拡大して2分岐した後に、基板上に照射することで基板上に干渉による縞模様を作成します。(b)図は基板上に作成した回折格子パターンの例で、凹凸のピッチは狙い波長によりますがおおむね1 µmの1/4程度の細かさです。(c)図はその上に半導体を再成長してLD用の元基板まで作成したところです。回折格子のピッチは基板上の照射するレーザ光の角度により調整できますが、わずかな位置調整で波長が変わるので慎重な調整作業が必要です。地震が発生した際は都度確認作業を必要となる繊細な装置です。処理できるウエハサイズは光源の強度や拡大したビームのサイズで決まります。エリア内であれば一括でパターン形成ができるメリットがある一方で、部分的にピッチを変えたりすることは困難です。

(a)干渉露光装置の模式図
(b)回折格子パターンと(c)再成長後の回折格子パターン
干渉露光法による回折格子の作成

近年では干渉露光法に替わり電子線(EB)描画法が主流となっており、当社でも導入されています。EB描画装置は電子銃から発生する電子線でウエハ上に直接描画パターンを描くことができます。パターンを一本ずつ描画するため処理時間は必要で、初期の製品では2インチウエハ1枚の処理に3日必要でした。しかし、ウエハ内で複数の発振波長のLDを作ったり、個々の素子内で回折格子ピッチを変更するような自由度があります。干渉露光装置同様、EB描画装置も繊細な装置のため振動には敏感ですが、この装置はさらに磁場の影響を受けやすい装置です。例えば装置の近くにエレベータなどがあると描画結果に影響する恐れがあるため、設置場所には慎重な事前調査が必要になります。また、電源ラインに大きな電流が流れると、磁場が乱れて描画像に影響が出るなど思わぬトラブルも発生しました。

DFB-LDは通信用光源としては単体の光源ではなく、電界吸収型(EA)変調器と集積されて使用されることが一般的となってきました。また、1つの光源モジュールで複数波長に対応できる波長可変型LDも増えています。一方、ガス検出用光源としては各種のガス吸収線の波長に合わせた光源が必要ですが、固定波長でも支障がなく高速変調も必要ないため、今でもシンプルなDFB-LDが活躍しています。

EB描画装置
EB描画装置
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