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デバイス開発ヒストリー

デバイス開発ヒストリー

今回からアンリツのデバイス製品開発ヒストリーをシリーズでお送りします。

1964年に東京オリンピックが開催されて以降、高度成長期を迎えて通信需要が急増するようになりました。日本電信電話公社(当時)による光ファイバ伝送網の整備が決定し、光通信時代の幕開けを迎えることとなりました。当社でも対応する計測器とそこで使われる半導体レーザや高速ハイブリッドICなどのキーデバイスの研究開発がスタートしました。現在のセンシング&デバイスカンパニーの製品の多くがこの時の開発を源流としています。このシリーズではこれらアンリツのデバイス製品開発の歴史を紐解いていきます。今回は第1回目として光デバイス開発のきっかけと初期段階のお話をします。

センシング&デバイスカンパニーの沿革

光デバイス(1)~半導体レーザ開発の黎明期~

光ファイバ通信は伝送損失が小さく、高速・大容量伝送が可能となるメリットがありますが、光ファイバ芯線はガラス製であるため断線することがあります。長距離におよぶ光ファイバの破断点を特定するためには光パルス試験器(OTDR:Optical Time Domain Reflectometer)という測定器が必要です。製品の実現には光通信で使用される波長である1 µm帯で発光する高出力の半導体レーザ(LD:Laser Diode)が必須でしたが、この時まだ一般購入できる適当な製品がありませんでした。

今日ではCDの普及とともに、LDやLED(発光ダイオード)などの半導体発光デバイスが家庭にまで浸透していますが、当時レーザといえば固体レーザやガスレーザが主体でした。出力が大きい反面、装置規模が大きく、とてもデスクトップの測定器に収まるサイズではないうえ、光出力をファイバに入力することは困難でした。光通信用光源の主体は今後LDになっていくとの見通しから、我々も研究開発に着手しました。1960年代後半から、この分野の草分けである東京工業大学の末松研究室のご指導を得て基礎研究を始めました。1975年には事業所内に専用の結晶成長炉を導入し本格的に研究開発を開始し、GaAs(ガリウム・ヒ素)を基板とした0.85 µm帯のLDの室温連続発振に成功しました。さらにNTT電気通信研究所からの技術指導を得て、1979年にInP(インジウム・リン)を基板とした長波長帯LDの研究に着手しました。

自社LDが搭載された光パルス試験器 MW98A、搭載された半導体レーザ

1981年に0.85 µm用OTDR製品化の後1984年からは待望の通信波長帯OTDR(左上図)に、開発された1 µm帯LDが搭載されました。

右上図の写真はこのOTDRに採用されていたLDです。穴あきの金属部品は放熱用のヒートシンクで幅6㎜の銅製、LDチップはその最上部に接合されており、わずかL0.3 × W0.4 × H0.1 mmの小ささです。ヒートシンクはLDの基板材料であるInPと線膨張係数が大きく違うので、直接半田付けすることは信頼性上無理があります。そこでLDチップと銅との間に、両者の中間の線膨張係数と優れた放熱性を併せ持つ、工業用ダイヤモンドが使われる贅沢な製品でした。

OTDRは光ファイバに送信された光信号の散乱光や反射光を解析することで、光ファイバの破断点や損失などを測定する計測器です。出射された光と、戻ってきた光との遅れ時間とレベルを観測することで距離と損失を算出できます。従って光源の出力は連続(CW)光ではなく矩形(くけい)パルスである必要があります。製造プロセスもまだまだ未熟であり、下図の右3例のようにレーザの中にはCW光の出力は問題がなくても、パルス駆動時や反射光の影響により光波形歪み・共振・不安定を起こすケースがあります。このため全数の光波形を検査する必要がありました。

光パルス波形の不良品イメージ

レーザはレーザポインタのように一直線に出射するイメージが一般的ですが、半導体レーザは発光源が非常に小さいため空間に広がるように発光します。これをレンズで集めてコア径10 µm(1 mmの1/100)程度の通信用ファイバに入力しなければなりません。光学系には球レンズと、屈折率分布型(GRIN)レンズの2枚のレンズを採用していました。GRINレンズは屈折率が中心から外周に向かって変化していく円柱形のレンズです。レンズ倍率をレンズの長さで制御できるメリットがあり小型で、よく使われていました。部品類はLDに近い方からファイバへと順番に固定されますが、このときファイバの軸合わせ精度はミクロンオーダが必要となります。固定には2液性接着剤を使うため、完全硬化には数時間が必要です。硬化中に時間変動や接着剤収縮による軸ずれの発生は避けられず、一定の間隔で修正する必要があります。接着剤の硬化が進むにつれ、動きが鈍くなっていくことを考慮してずれを補正する職人芸でした。1.55 µm OTDRは世界で初めてシングルモードファイバ対応の測定器として、光通信の品質向上にイノベーションをもたらしました。それを支えていたのは僅か1 mmにも満たない自社製LDであると、デバイス関係者は自負していました。

ファイバ結合の光学系
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