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電子デバイス講座

高周波デバイス技術 ~ヘテロ接合バイポーラトランジスタ~

トランジスタの高周波性能を現す指標

先端の計測器や通信システムで用いられる集積回路(IC:Integrated Circuit)の高性能化には、内部に使用するトランジスタの動作周波数を向上させることが必須です。当社ではIII-V族化合物半導体を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT: Heterojunction Bipolar Transistor)の高性能化に取り組んできました。

HBTの高周波性能を現す指標には電流利得遮断周波数(fT)と最大発振周波数(fmax)があります。これらによりどの程度の周波数まで動作するICを実現可能かについて推定できます。例えば、高周波増幅器ICの場合はシステム周波数の2~3倍のfmaxを持つHBTが必要になると一般に考えられています。

fTおよびfmaxの向上と関連するパラメータ

HBTのfTおよびfmaxは次式で定義できます*1。

fT およびfmaxの式 定義

ここで、gmは相互コンダクタンス、Cjeはベース・エミッタ間接合容量、Cdeはベース・エミッタ間拡散容量、Cjcはベース・コレクタ間接合容量、Cdcはベース・コレクタ間拡散容量、rbはベース抵抗です。

HBTの構造とπ型等価回路を図1に示します。エミッタ寸法Weを縮小させることにより、接合容量(CjeやCjc)を小さくできる他、寄生抵抗(rb)も小さくできるため、fTとfmaxの向上が可能です。

このようにHBTの高性能化においては、デバイスの微細加工技術の重要性が高いことが分かります。また半導体層構造設計を適切に行うことも重要です。ベース層を高濃度薄層化して寄生抵抗成分を低減させたり、コレクタ層構造を最適化して電子走行時間を短縮させたりするなどの半導体設計技術も重要になります。

図1 HBTの構造(左)と等価回路(右)
図1 HBTの構造(左)と等価回路(右)

トランジスタ(HBT)の高速化トレンド

当社では、化合物半導体材料としてガリウムヒ素(GaAs)およびインジウムリン(InP)を用いたHBTを開発してきました。InPを用いた第一世代(Gen1)のHBTにおいては、GaAsより高速なfT 200 GHz級のHBTを開発して、当社計測器用ICを実現してきました。今回、新たにfT 300 GHz級の第二世代(Gen2)のHBTを開発し、長期信頼性試験において十分な寿命を確認することができました。Gen2 HBTではエミッタ寸法をGen1 HBTの1 μmに対し半分の0.5 μmまで縮小させた他、ベース層のドーピング濃度を増大させることによりベース抵抗も低減させています。当社Gen2 HBTの高周波評価例を図2に示します。

図2 Gen2 HBTの高周波特性評価例
図2 Gen2 HBTの高周波特性評価例

各種世代のHBTのfT/fmaxとデジタルICの理論的に期待される動作速度*2を図3に示します。GaAs系HBTでは動作速度40 Gbit/s、Gen1 HBTでは100 Gbit/s、新しく開発したGen2 HBTでは160 Gbit/sまで狙うことができます。

今後は新たな周波数領域開拓に向けてさらなるHBTの高速化の要望に応えていくため、より高性能な次世代HBTの開発も進めていく予定です。

図3 各種世代のHBTの高周波特性と理論的なIC動作速度
図3 各種世代のHBTの高周波特性と理論的なIC動作速度

*1:電子情報通信学会知識ベース10群7編 モノリシックマイクロ波集積回路
*2:E. Sano, Y. Matsuoka, T. Ishibashi, IEICE Trans. Electron., vol. E78-C, pp.1182, 1995

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