残骨検査の最適解、デュアルエナジーセンサ技術
食品のX線検査では、デュアルエナジーセンサ技術の導入が進んでいます。この技術は、一度のX 線照射で得られる高エネルギーX 線画像と低エネルギーX線画像を合成し、異物信号を強調して検出精度を高めるものです。骨の密度が低い鶏肉と魚肉の残骨検査では、デュアルエナジーセンサ搭載のX線検査機が世界中で活用されています。今回は、デュアルエナジーセンサの概要、標準モデル(シングルエナジー)とデュアルエナジーモデルの検出感度の違い、食肉加工食品での応用例、さらに骨と同じく関心の高いプラスチック(樹脂)異物の検出性能について解説します。
デュアルエナジーセンサの仕組みと特徴
検査品や異物は、その物性によってX線の透過率が異なり、高エネルギーのX 線で得られる透過画像と、低エネルギーで得られる透過画像は異なります。

X線検査機で発生させたX線は、エネルギー帯が集中しているわけではなく、低エネルギーから高エネルギーまで分布しています。デュアルエナジーセンサは、高エネルギーの透過画像と低エネルギーの透過画像を同時に得ることが可能な、特殊なセンサです。

高/低2種類のエネルギー帯で得られた透過画像の差を取ることにより、変化のない部分が差し引かれ、異物だけが明確化します。

シングルエナジーとデュアルエナジーの性能差
例1 鶏もも肉(または鶏むね肉)の残骨検査
検出面積には明らかな差があります。
これは、デュアルエナジーではシングルエナジーに比べて、骨の先端の細い部分や薄い部分まで捕捉していることを示しています。
シングルエナジー

デュアルエナジー

例2 魚の切り身の残骨検査
検出面積には明らかな差があります。
これは、デュアルエナジーではシングルエナジーに比べて、残骨をより多く捕捉していることを示しています。
シングルエナジー

デュアルエナジー

(注) 魚の切り身に残る小骨は、のどに刺さる、食感を損なうなどの理由で消費者に敬遠されます。そのため、加工前にピンセットで取り除かれることが一般的です。魚の骨は鶏骨よりさらに細いため、デュアルエナジーセンサ搭載モデルの中でも最高性能のセンサが用いられます。
食肉加工食品での検査例
牛や豚の骨は、排除すべき異物でしょうか。牛や豚の骨は太く密度も高いため、シングルエナジーのX線検査機でも十分に検出できます。一方で、骨付き肉をグリルする料理があるように、通常、牛や豚の骨そのものは異物とは認識されません。しかし、ハンバーグ用の牛ミンチ肉に、ミートスライサーで削られた骨片が混入していた場合はどうでしょうか。
牛骨片や豚骨片は、薄くても硬いため、口の中を傷つけるおそれがあります。このような骨片は、排除すべき異物と考えられます。こうした検査でも、デュアルエナジーセンサが有効です。
例3 ハンバーグ内の残骨検査
検出できる薄い骨片の数に明らかな差が認められます。
シングルエナジー

デュアルエナジー

骨片

デュアルエナジー技術はプラスチック(樹脂)の検出にも効果があるか?
プラスチック(樹脂)製のスイッチや保護カバーが劣化して脱落し、食品に混入することがあります。また、食品用のプラスチック(樹脂)製トレーや包装の一部が欠け、食品に混入するケースもあります。デュアルエナジー技術で、こうしたプラスチック(樹脂)片は検出できるのでしょうか。
食品工場で一般的に使われるプラスチック(樹脂)を硬いものから順に見ていきます。低溶出性のフッ素樹脂(PTFE)は、食品や薬品の製造装置に用いら
れています。樹脂の中でも硬い部類(2.0 g/cm3)に入り、長期の使用にも劣化しにくい性質があります。アンリツの樹脂テストピースにもPTFE が使われています。食品や薬品が直接触れないスイッチや保護カバーには、ポリ塩化ビニル(PVC・1.4 g/cm3)やアクリル樹脂(PMMA・1.2 g/cm3)が多く使われています。脱落片の厚みや大きさによっては、X線検査機で検出できる可能性があります。シングルエナジーとデュアルエナジーで比較実験を行ったので、その結果を見ていきます。
例4 ハンバーグ内に混入したPVCの検査
ポリ塩化ビニル(PVC)のテストピースは当社では販売していませんが、今回の実験用に製作しました。
デュアルエナジーでは、ひとつ下のサイズのテストピースまで検出できています。
シングルエナジー

デュアルエナジー

食品容器に使われる樹脂についてもお話しします。代表的なものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどがあり、密度の範囲は0.9 g/cm3 ~1.1 g/cm3 です。厚みも100 μm ~ 250 μm(0.1 mm ~ 0.25 mm)と非常に薄いため、デュアルエナジーセンサを用いても、食品に混入した容器や袋の小片(切れ端)は検出が極めて困難です。
まとめ
今回は、残骨検査で有効なデュアルエナジーセンサを紹介しました。デュアルエナジーセンサを搭載したX線検査機は他のメーカからも発売されていますが、最上位価格帯の製品であるため、導入時には各社の性能を十分に比較することをお勧めします。骨はすべての動物に存在するため、商品に残骨が認められる確率は比較的高いといえます。一方、樹脂のような生産由来の異物は、種類や発生状況が複雑で発生確率も低いため、検査技術だけに頼るのは適切ではありません。異物の混入を防ぐには、作業手順の順守と設備の点検が重要です。
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