そのアルゴリズム選択は正しい?
X 線検査機を生産ラインで使用されているほとんどの方は、社内であらかじめ定められた管理基準(検出すべきテストピースの種類とサイズ)が満たされていれば、感度設定時に求められるアルゴリズム選択(手順)にこだわらないと思います。
もし、現在とは異なるアルゴリズムを選択することで、管理基準を上回る感度を実現できるとしたらそれを試してみたいと思いませんか?
各被検査品には重なり、エッジ、粒状、線状形態などの特性があり、その製品影響を消し込むように(低減させる)画像処理を施します。これが「異物検出アルゴリズム」で、被検査品に最適なものを選択すれば検出感度を向上させることが可能となります。これは、消費者や取引先からのクレームを低減させて、品質保証を強化することに繋がります。そこで今回は、「異物検出アルゴリズム」の選択違いによる検出感度差を分かり易い事例で解説します。
画像処理メカニズム
左図のX線を透過しただけの画像(生画像)だけでは、X線検査機はそれ自体に異物が混入しているかを判定することができません。そこで被検査品の特性(密度、形状、材質)や検出したい異物の物性に合わせ、被検査品の製品影響やノイズを低減させ、異物の信号だけを正確に取り出す高度な画像処理を施します。この画像処理の最適な組み合わせを「異物検出アルゴリズム」と呼びます。
異物検出アルゴリズムの選択
便宜上、当社の現行モデルXR75シリーズX線検査機を使用して「異物検出アルゴリズム」について解説します。
- 異なるアルゴリズムを試してみたい被検査品の登録をしますが、操作画面に表示される5つの「異物検出アルゴリズム」の中から1つ選択します。まずは、サンプルイメージと説明文を読んでそれぞれのアルゴリズムの特性をおおよそつかみます。次に、被検査品の透過画像を見て、特性が近いと思われるアルゴリズムを選びます。アルゴリズムの説明は選択する際の目安と考え、1つではなく、複数のアルゴリズムで設定、それぞれの検出感度を比較し、お客さまが望むテストピース、異物を一番検出できるものを選択するのが原則です。

- 新規設定画面で、普段使っていない品種番号を選択し、X線検査機に被検査品を流します。X線指示部に表示される被検査品の透過画像の形状を覚えておきます。

- ①で選択した「異物検出アルゴリズム」のサンプルイメージと実際に流して表示された透過画像の形状が似ていれば正しい選択に近い状態です。もし異なる形状だった場合は選択ミスをしているかもしれません。

異物検出アルゴリズムによる検出感度の違い
異物検出アルゴリズムの選択違いによる結果をご理解いただくため、同一の被検査品、異なる異物検出アルゴリズムを使用し、SUS線、SUS球のテストピースでの検出感度の違いを検証しました。
事例1 冷凍餃子
スーパーや無人販売所でお馴染みの冷凍餃子ですがどの異物検出アルゴリズムが最適だと思いますか?
餃子の耳の部分に線状形態があるためNo.4【線状や粒状の製品用】を選択するか、あるいは冷凍状態では餃子の耳部分で凍結してエッジが立ちやすくなるため、No.3【エッジ影響の強い平坦な製品用】のどちらを使用するか迷うため、両方のアルゴリズムで検証しました。
- No.4【線状や粒状の製品用】
SUS線 Φ 0.4 mm、SUS球 Φ 0.4 mm
- No.3【エッジ影響の強い平坦な製品用】
SUS線 Φ 0.3 mm、SUS球 Φ 0.4 mm
結果、No.3【エッジ影響の強い平坦な製品用】の方がSUS線で1ランク上となりました。
しかし、異なる餃子、また検出したい異物によってはNo.4【線
状や粒状の製品用】のほうが良い検出結果になる場合もあります。
事例2 カートン入りラーメンセット
空港のお土産屋やスーパーなどで見かけるカートン入りラーメンセットですが、被検査品だけで考えれば麺は線状形態なのでNo.4【線状や粒状の製品用】、あるいはカートンのエッジ影響を考慮し、No.3【エッジ影響の強い平坦な製品用】を選択したくなります。しかし、塩分、油分、水分を含んだ付属の小袋スープ、麺は重なって封入されているため凹凸が生じています。透過画像は、カートンエッジ部分の色が薄く、内容物の方が濃いことがわかります。下図の緑で〇をつけたカートンのエッジ部の影響もご覧ください。左右端カートンエッジ部は小さく、内容物は大きくなっています。
このような条件からNo.5【重なりの多い製品用】を使用するのが適切です。
下記は、No.4【線状や粒状の製品用】とNo.5【重なりの多い製品用】で検証しました。
- No.4【線状や粒状の製品用】SUS線 Φ 0.4 mm、SUS球 Φ 0.5 mm
- No.5【重なりの多い製品用】SUS線 Φ 0.4 mm、SUS球 Φ 0.4 mm
結果、SUS線ではどちらもΦ 0.4 mmを検出していますが、SUS球ではNo.5【重なりの多い製品用】のほうが1ランク上のΦ 0.4 mmを検出しています。
事例3 骨付き肉入りスープカレー
レトルトパウチのカレーといっても一括りにできないほど多様な商品が存在します。
アルミ包材は中身を目視不可のため、触診で得られる形状、実際にX線検査機で流したときの透過画像から最適だと思われる「異物検出アルゴリズム」を選択します。
今回の被検査品は、骨付き鶏モモ肉が丸ごと一本入ったスープカレーです。透過画像の形状を見ると、カートンの影響値よりも内容物の製品影響値の方が高いので、No.5【重なりの多い製品用】を選択するのが適切です。
下記は、No.4【線状や粒状の製品用】とNo.5【重なりの多い製品用】で検証しました。
- No.4【線状や粒状の製品用】SUS線 Φ 0.4 mm、SUS球 Φ 0.5 mm
- No.5【重なりの多い製品用】SUS線 Φ 0.3 mm、SUS球 Φ 0.4 mm
結果、No.5【重なりの多い製品用】のほうがどちらも1ランク上となりました。
余談ですが、下記のように製品影響値の凹凸がゆるやかな場合、No.2【エッジ影響の弱い平坦な製品用】を選択するのが好ましいです。
まとめ
上記の事例から異物検出アルゴリズムの選択で感度差があることがご理解頂けたと思います。異物検出アルゴリズムの説明はあくまで目安なのでお客さまが検出したいテストピース、異物を一番検出できるものが最適な異物検出アルゴリズムとなります。同じ被検査品を異なる「異物検出アルゴリズム」で比較検証してみてはいかがでしょうか。
次号Vol.19では、自動設定後の感度調整で活用する「検出リミット」と「ノイズ除去リミット」をテーマにした内容をご紹介します。
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