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Wi-Fi 6E の利点と課題

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Wi-Fi 6E の利点と課題

6 GHz開放の始まり

2020年は無線LANの歴史において、大きな変革が起きました。
4月23日に米国のFCCが6 GHz帯(5,925~7,125 MHz)を免許不要で使用できる事を決定し、その他の地域・国でも追随する動きを見せています。1,200 MHz帯域 という極めて広い周波数を用いた高速・大容量データ通信によって、新たなアプリケーション・サービスが開発される事が期待されており、数ある免許不要無線通信技術の中で無線LANはいち早く6 GHz帯をサポートしました。

無線LANが使用できる周波数資源

無線LANが使用できる周波数は国・地域によって異なります。米国を例に取り上げると、これまで2.4 GHz帯と5 GHz帯の2つのバンドで最大572 MHzでした。6 GHz帯が加わったことにより、従来の3倍以上の周波数が利用できるようになりました。

  • 2.4 GHz帯:合計 72 MHz
    2.4 GHz帯:合計 72 MHz
  • 5 GHz帯:合計 500 MHz(DFS対象周波数を除くと180 MHz)
    5 GHz帯:合計 500 MHz(DFS対象周波数を除くと180 MHz)
  • 6 GHz帯:合計 1,200 MHz
    6 GHz帯:合計 1,200 MHz

無線LAN技術の普及と歴史

無線LANはEthernetを代表とするローカルエリアでのデータ通信を、ケーブルレスで実現する技術です。ラップトップPCなどのバッテリ駆動デバイスから採用が始まりましたが、スマートフォンの登場と成長によって急速に普及しました。

無線LANを代表する技術であるIEEE 802.11は、最初の規格がリリースされた1997年時点では2.4 GHz帯のみをサポートしており最大伝送速度2 Mbpsでした。1999年にIEEE 802.11b(2.4 GHz帯専用規格、最大伝送速度11 Mbps)とともにリリースされた802.11a(5 GHz帯専用規格、最大伝送速度54 Mbps)から5 GHz帯の利用が始まりました。

その後5 GHz帯で若干の周波数拡張は行われたものの、使用できる周波数に劇的な変化はありませんでした。しかしこの度、約20年ぶりに新たな周波数帯が割り当てられ、大きな注目を集めています。

2.4/5 GHz 帯における無線LAN利用の課題

無線LAN登場の初期においては、サポートデバイス数が少なかったことや通信に求められるデータ量も小さかったため、周波数の制限は大きな問題にはなりませんでした。しかし、スマートフォンの普及・進化やビデオストリーミング配信サービスの成長などにより、無線LANの通信需要も急増したことで状況が大きく変わりました。

成長し続ける通信需要に応えるため、チャンネル帯域幅の広帯域化・多値変調・空間多重といった技術を取り込むことで無線LANは技術進化をし続けてきました。しかしながら、20年で急増した無線LAN通信需要に対して利用できる周波数幅はほぼ変わらなかったため、無線LANに割り当てられた周波数は混雑しており、高速データ通信を安定して行うのはいまだに難しい状態です。

また、COVID-19によって生まれたリモートワーク・リモート学習などの新しい生活スタイルに伴う通信需要も、この問題を加速させる事になりました。

以下に2.4/5 GHz帯の問題点をいくつか挙げます。

混雑する2.4 GHz/5 GHzの周波数

需要増に応えられない固定化した周波数範囲

最大で合計580 MHz幅

  • 2.4 GHz帯:80 MHz
  • 5 GHz帯:500 MHz

*:5 GHz帯はレーダーの利用状況によっては最大で180 MHz幅までしか使用できません。

他のシステムと周波数を共有する

2.4 GHz帯は、電子レンジ・Bluetooth®・Zigbee・特定小電力無線なども免許無しでの利用が許されています。電波は空間で伝搬するため、近距離で同時に使うと通信障害が起きる場合があります。昨今では、無線LAN対応デバイスだけでなくBluetoothサポートデバイス(True Wireless Stereo やスマートスピーカーほか)も急速に増えたため、非常に混雑しています。

5 GHz帯は、500 MHz幅のうち320 MHzについては気象・船舶レーダーの利用が優先されており、無線LANはこれらへ悪影響を与えない条件下でのみ利用が許されています。レーダー波を検出した時、無線LANの周波数を変更する機能(Dynamic Frequency Selection)を持たないデバイスは、最大で180 MHz幅までしか通信に利用できません。そのため、DFSを必要としない周波数しかサポートしないデバイスも存在しています。

実用性が低い160 MHzチャンネル帯域幅

IEEE 802.11ac/axでは、5 GHz帯の広帯域を活用して高速データ通信を実現するため、最大160 MHzの帯域幅を使えます。しかし、レーダーが優先される周波数範囲を除くと1チャンネルも確保できません。常にレーダー波が届かない場所があったとしても、160 MHz運用では2chしか確保できないため、接続できるクライアントデバイス数が極端に減ってしまいます。通信できないクライアントが生じかねないため、一般的にはチャンネル帯域幅を40 MHz以内とし、チャンネル数を増やして運用しています。この点を見越して、80 MHz以上のチャンネル帯域幅をサポートしないデバイスも多く存在しています。

旧規格との互換性によって低下するネットワークキャパシティ

旧規格のみサポートするクライアントデバイスがセル内にある時、制限がかからない限り、アクセスポイントは接続性を保つために、旧規格で動作します。その際、最新規格をサポートするクライアントデバイスも、そのセル内では旧規格でしか通信できないため、セル内の通信容量が低下します。

空間多重技術の実装上の制限

伝送速度向上のため無線LAN規格では最大で8 Streamをサポートします。複数のアンテナを搭載するにはアンテナ間の距離を一定以上離す必要があり、またストリーム数に応じて消費電力も増加してしまいます。

スマートフォンなどのモバイルデバイスはその筐体サイズなどから、搭載できるアンテナ数やバッテリ容量にも制限があるため、1 Streamしかサポートしない物も多く、多くても 2 Streamまでしか利用できないことが一般的です。

無線LAN 6 GHz帯の利点

6 GHz帯は免許不要帯として開放され、2.4/5 GHz帯が抱えていた問題の多くを解決できるようになりました。

  • 混雑を解消する最大1.2 GHzに及ぶ広大な周波数
  • ようやく実用的となった160 MHz幅チャネル運用
  • IEEE802.11axサポートデバイスだけで構成された、高速・高効率なネットワーク
  • 最新セキュリティ技術WPA3で守られた、安全なネットワーク

6 GHz帯利用の課題

前のパラグラフにあるように、6 GHz帯には多くの特筆すべき利点があります。しかし、これまで利用されてきた免許システムの利用が優先されるため、無線LAN通信資源として自由に使える訳ではありません。以下に6 GHz 帯の課題を挙げます。

既存免許システムを保護するためのルール

6 GHz帯は高い信頼性が求められる通信サービスで使用されており、それらの業務に支障を与えないため、送信電力制限や干渉回避技術(AFC: Automated Frequency Coordination)の搭載が、義務付けられています。デバイスの役割(アクセスポイント/ステーション)・設置場所(屋外/屋内)によって、許されている周波数・送信電力・電力密度が異なるため、6 GHz帯をサポートする無線LAN製品を開発する際は、製品種別に応じた規制を遵守できているか、十分に評価しなければなりません

Predominant Licensed Services

Predominant Licensed Services

Unlicensed Use

Unlicensed Use

*:Automated Frequency Coordination

屋外で無線LANアクセスポイントを動作させる時、その場所で免許システムに干渉しない周波数情報をAutomated Frequency Coordination(AFC)システムから取得する

未成熟なRFコンポーネント

6 GHz帯はこれまでも無線通信に使用されてはいましたが、免許を与えられた特定の企業だけに許されており、無線装置の数も限定的でした。その多くは移動しながら通信する訳ではなく、固定された2つの地点間の通信に使われている事から、無線機のサイズは大きく、安定した電源が確保された状態で使われています。また、一つの通信装置が1,200 MHz帯域 全てを使用する事も無く、その内の一部の周波数を使う物でした。

スマートフォンとは大きさ・重量・電源など、求められる条件が大きく異なるため、免許システムで使われていた部品がそのまま流用できる訳ではありません。小型化・軽量化・省電力化が必要である上、免許システムでは未経験であった1,200 MHzという広い周波数範囲で等しい通信性能を実現する必要があります。また、その通信性能を多くの消費者に受け入れられる価格で提供しなければなりません。この課題解決に向けた挑戦は始まったばかりであり、多くの開発者が未知の問題に直面するかもしれません。

資料ダウンロード

6 GHz帯無線LAN製品の開発/製造におけるアンリツのソリューション

ここまで見てきたように、米国のFCCを起点に免許不要で使用がはじまった6 GHz帯は、急増し続ける無線LAN通信需要における多くの問題を解決できる可能性があります。しかし、6 GHz帯を使った無線LAN製品の開発は、以下に挙げるような課題に挑戦していかなければいけないと考えております。

6 GHz帯無線LAN製品開発における新たな挑戦

  • 免許システムとの共存機能を搭載する
  • コンシューマー向け大量生産品では初となる6 GHz帯への対応
  • 1,200 MHz幅に渡る、均質で高いRF性能を実現
  • 160 MHzチャンネル帯域幅への対応

アンリツはこれまで無線LAN製品開発の最前線に立ち、進化するIEEE 802.11規格に沿って無線LAN計測ソリューションを提供してきました。6 GHz帯無線LAN製品の開発から製造ラインまで、信頼できるラインアップを揃えています。

無線LAN製品の開発向けに

ワイヤレスコネクティビティテストセット MT8862A
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無線LAN製品の開発を対象としたRF送受信特性測定器です。
6 GHz帯を使った無線LAN製品の開発という大きな課題に直面している開発者に、安定したソリューションを提供します。

無線LAN製品の大量製造ライン向けに

ユニバーサルワイヤレステストセット MT8870A
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無線LAN 6 GHz帯に対応したダイレクトモード/ノンシグナリング専用のRF測定器です。
スマートフォン/オートモーティブ/IoTなどの無線LAN製品の効率的な製造に貢献します。

IEEE 802.11ax 6 GHz帯のRF送受信特性試験のデモンストレーションビデオ

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