アンリツ株式会社(社長 橋本 裕一)は、
マイクロ波[※1]回線で使用される無線通信システム、レーダーなどの開発・製造用信号源として、新たにRF/マイクロ波信号発生器を開発。6月23日から販売を開始いたします。
各種無線通信機器の開発・製造では信号発生器を用いて基準信号を送信し、性能評価を行うことから、基準信号の品質が重要視されています。しかし、信号発生の原理上、
位相雑音[※2]が基準信号に含まれ、測定結果などに影響を及ぼします。
今回アンリツが開発したMG3690Cは、前機種であるMG3690Bシリーズの位相雑音を約1/5に低減しています。これにより、従来以上に純度の高い基準信号を発生させることが可能。各種マイクロ波帯通信システムの性能評価を高精度に行え、品質向上に貢献いたします。
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[開発の背景]
マイクロ波回線は、通信・放送をはじめとしてレーダー、気象観測、航法などさまざまな分野で利用が拡大しています。
マイクロ波帯無線機器の開発・製造では、信号発生器を用いて基準信号を送出し、性能評価を行っています。しかし基準信号には位相雑音が含まれることから、品質評価の信頼性を確保するために、位相雑音の少ない信号発生器が常に要求されています。
そこで、アンリツは従来から提供していたマイクロ波/RF信号発生器MG3690Bシリーズの機能を強化。後継機種として、MG3690Cシリーズを開発いたしました。
MG3690Cシリーズは、MG3690Bシリーズの位相雑音を約1/5に低減しており、従来以上に高純度な基準信号で、各種マイクロ波帯無線機器、レーダーの性能評価が行えます。
[製品概要]
RF/マイクロ波信号発生器MG3690Cシリーズは、マイクロ波帯の無線機やレーダー、RFコンポーネントなどの開発・製造用の試験信号源として使用される信号発生器です。
従来機種であるMG3690Bシリーズの位相雑音を約1/5に低減しており、高純度な基準信号を発生させることができます。
MG3690Cシリーズは、2 GHz~70 GHzの周波数範囲で下記の6機種を用意しています。マイクロ波回線では、用途に応じて使用される周波数が異なることから、適切な機種を選択できます。なお、0.1 Hz~2 GHzまではオプションで対応できます。
- MG3691C:2 GHz~10 GHz
- MG3692C:2 GHz~20 GHz
- MG3693C:2 GHz~30 GHz
- MG3694C:2 GHz~40 GHz
- MG3695C:2 GHz~50 GHz
- MG3697C:2 GHz~70 GHz
[主な特長]
■ 低位相雑音
MG3690Cシリーズは、マイクロ波帯の代表的な周波数である20 GHzにおいて、プレミアム低位相雑音オプションを追加した場合、10 kHzオフセット周波数[※3]で-115 dBc/Hz[※4]という位相雑音を実現しました。これにより業界最高品質の基準信号でマイクロ波帯無線機器やレーダーなどの性能評価が行えます。
■高精度な中間周波数信号の生成が可能
マイクロ波帯通信システムは、無線機内部で本来の周波数を低周波の中間周波数[※5]に変換して通信する仕組みになっています。中間周波数の決定にはローカル信号[※6]が必要ですが、MG3690Cを用いることで、低位相雑音のローカル信号を発生させることが可能。高精度な中間周波数信号を生成できます。
■高出力・高速周波数切り替え
MG3690Cシリーズは、20 GHzで+23 dBm[※7](200 mW)、40 GHzでも+19 dBm(80 mW))という高い出力電力[※8]と5 ms(5/1000秒)という周波数切り替え速度を実現した信号発生器です。高出力電力により、外部増幅器を併用することなくローカル信号を発生させることができます。また、5 ms(5/1000秒)の周波数切り替えにより、周波数の高速切り替えが要求されるデバイス測定用システムやレーダー等の信号源としても最適です。
[対象市場・用途]
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対象市場
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無線機器・レーダー・衛星関連メーカー
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用途
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マイクロ波帯無線通信システム、レーダー、RFコンポーントなどの開発・製造
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[ ※用語解説 ]
[※1] マイクロ波
携帯電話やテレビ放送、衛星通信、レーダーなどで用いられる電波。
[※2] 位相雑音
信号発生の原理上、必ず含まれる余分な周波数成分。信号の裾野のような周波数成分で、裾野が狭い信号が理想的である。
[※3] オフセット周波数
希望周波数(得たい周波数)から、どれ位離れた周波数であるかを示した値。
[※4] dBc/Hz
位相雑音を表す単位。1 Hz単位に換算した搬送信号に対する雑音の比で表す。
[※5] 中間周波数
高周波のマイクロ波信号を無線機内部で変換し、低周波数化したもの。
[※6] ローカル信号
中間周波数を決定する際に必要とされる信号。たとえば、周波数594 kHzの信号を低周波化し、455 kHzの中間周波数にする場合、1049 kHzのローカル信号を使用して、455 kHzの中間周波数を得る(1049-594=455)。
[※7] dBm
1 mW(ミリワット)の電力を基準にして表した電気信号などの電力値。
[※8] 出力電力
信号の電力のこと。通信に必要な出力電力は無線通信システムごとに定められており、不十分な場合には、外部増幅器を使用する。