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『テクニカルノート』

オート設定時の被検査品の流し方は適切ですか?

金属検出機は、食品、医薬品、工業製品などの金属異物を検出する目的で原料から最終工程まで幅広く活用され、今や欠かせない検査機になっています。社内基準を守るために品質管理者は、金属検出機の感度設定を適切に行うことが求められています。新しい商品の感度設定をするときは、通常、オート設定(※)を行いますが、大事なポイントが見落とされているケースがあります。

※オート設定:
検査品を10回程度流すことで、機械自身で被検査品が磁界に与える影響を測定し、正常品の基準値を決定する機能。アンリツの金属検出機は、基準値の5倍の位置にNG判定となる値を検出リミットの初期値として自動的に設定します。

その結果、アンリツの金属検出機を使っているお客様から、「社内基準感度が満たせない」「現場で誤動作が多い」というお問い合わせが弊社サポートセンターに寄せられています。そこで今回は、オート設定時の正しいワーク(被検査品)の流し方について解説します。原因が分かれば、適切な対処ができるようになります。

復習

金属検出機の動作原理の復習から始めましょう。金属検出機は、検出ヘッド(トンネル状のセンサー部)に自ら磁界を発生させ、被検査品がこの磁界を通過する時の磁界の変化(製品影響)をモニターし、設定した検出リミット(しきい値)を超える信号を検知した場合、金属異物混入と判定します。

磁界イメージ
同軸形金属検出機の磁界イメージ
検出リミット
検出リミット(しきい値)

ここで実験です。感度設定するときに、下記の写真のように検出ヘッドのすぐ近くから被検査品を流してみましょう。

コンベア端面から流した場合 製品影響値 推定感度
手挿入した状態で流した場合 製品影響値 変化した推定感度

手は金属異物ではありませんが、人間の体は水分、塩分、鉄分(血液)が多量に含まれているため、被検査品同様、磁界に影響を与え、製品影響値が大きく変化します。この影響値を基準にするとOKとNGを分けるリミット(しきい値)が本来よりもかなり上に来た状態で設定されてしまう、つまり、期待したサイズのテストピースが検出できないことになります。コンベアの端面から流して品種設定した場合、推定感度はFeφ0.6 SUSφ0.8ですが、手挿入した場合は、Feφ1.1 SUSφ2.3と、検出感度に歴然とした差異が生じます。これはリミットを決める基準となる製品影響値が異なるからです。

上記は大変わかりやすい例ですが、全く気が付かずに、製品影響が大きく出てしまうケースを次に説明します。

感度設定時のうっかり① ~結露していませんか~

冷凍食品でよくご相談を受けるケースです。感度設定をしているうちに、室温や手の体温の影響で被検査品の温度が上がり、結露(包装の表面に水滴が付着)した状態になります。同様に食品中に含まれる水分も氷から水に変化しますが、水は氷に比べ電気伝導性が高く、磁界に対する影響も大きくなります。結露した状態で感度設定をしようとしても思ったような感度が実現できません。これは製品影響が大きく、リミット(しきい値)も必然的に上がってしまうからです。

冷凍ほぐし鶏肉
結露が進むにつれ製品影響値が上昇

感度設定時のうっかり② ~被検査品の中身の偏り~

未包装品の品種登録を行う際、皆さんはどのような設定用サンプルをご用意されていますか? バラ流しの被検査品をジッパー付きのプラスチック袋などに入れて流すことが多いでしょう。感度設定時は、実ラインの偏りを考慮したサンプルを使うことが肝要で、それにより適正な設定を行い、生産開始後の誤検出を回避して歩留まりを向上させることができます。

未包装品の事例としてミンチ肉のバラ流しを例に解説します。ミンチ肉は、チョッパーという装置にブロック肉を投入するとミンチ状に押し出され、搬送コンベアに乗ります。チョッパーを作動させた直後は押出される量が多く、だんだんと少なくなる傾向にあります。また、原材料の赤みと脂肪分の違いにより押し出される量が変動します。次工程に向かってコンベア上を連続的に流れるミンチ肉は厚みにばらつきが出ており、製品影響値は一定ではありません。

チョッパー 厚みのバラツキ

製品影響値の差を実感頂くため、豚肉ミンチ肉をジッパー付きのプラスチック袋に入れて実験しました。①のサンプルは、内容量を多めにして厚みを持たせました。これとは対照的に②のサンプルは通常の量を詰めたものです。

厚みが大きい状態 厚みが大きいときの製品影響値
厚みが小さい状態 厚みが小さいときの製品影響値

製品影響値の違いがお判りになると思います。オートによる感度設定では、製品影響値に一定の倍率をかけて検出リミット(しきい値)を決めるので、①の検出リミットは②の検出リミットより大きくなることは直観的にわかります。

サンプル①をサンプル②で設定したリミットで金属検出機に流すと、NGになります。生産ラインでは、上述したように流量の偏りのある状態で被検査品が流れてくるので、②の設定では誤検出が頻発します。ぎりぎりの感度を狙うのではなく、余裕をもったリミットを設定することが必要ですが、感度も重要なので、どのくらい厚みを持たせて感度設定するか何種類かサンプルを作って実験してみましょう。

縦ピロー包装の商品でも内容物の偏りが起きます。自動電子計量機の真下に設置されている縦ピロー包装機ですが、内容物を上から袋に落下させるので、必然的に下の方が膨れます。

縦ピロー包装の内容物の偏り

同じような下膨れの状態のサンプルを作って感度設定をすることが必要です。もしサンプルの表面を手で平らになるように均した状態で感度設定を行った場合、偏りが緩和され、製品影響値も下がるので、検出リミット(しきい値)は余裕が無い状態で登録されてしまいます。余裕のないリミットでは、生産開始前の感度確認時や生産開始後に誤検出が頻発します。

もし、生産ラインで高感度検出を求めるなら、作業員を配置する、ローラーを取り付ける、などをして、金属検出機に入る前に被検査品の偏りを均します。その場合、先ほどとは逆で、内容物の厚みを均したサンプルを使ってオート設定し、検出リミットを下げる必要があります。

感度設定時のうっかり③ ~類似品の設定を流用しない~

全く同じ商品だが内容量のみが異なる、あるいは見た目が同じだからという理由で類似品の設定を呼び出してコピーをしていませんか?お惣菜を例に説明します。例えば「只今30%増量中」など期間限定のキャンペーンで内容量を増量した場合、含まれる塩分、水分量が多いので、通常品用のリミットでは、生産前の感度確認作業や生産開始後に誤検出を頻発します。

ポテトサラダ通常量時の製品影響値
ポテトサラダ増量時の製品影響値

影響値の差が想像したより大きいことがわかります。同じ惣菜でも、内容量が変われば違うものとして新規に感度設定をしましょう。季節によって、塩分量や味の濃さを変えているときも、同じことが起きる可能性があります。

まとめ

今回は金属検出機の感度設定時の被検査品の流し方について、よくある「うっかり」を解説しました。現場で生産前の感度確認をするときも、同じ理由で、「テストピースが取れない」「正常品がNGに判定される」ということが起きている可能性があります。生産するアイテムの入れ替えがあまり多くなく、感度設定作業の頻度が少ない生産ライン(数か月単位)の場合、品質管理者は過去の経験を忘れてしまうことがあります。生産ラインでNGが頻発すると、再検査の手間や商品廃棄の増加につながりますので、このテクニカルノートを参考にして、適正な感度設定を行い、トラブルを未然に防ぎましょう。


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