X線検査機で見逃しがちな清掃と点検
今や異物検査のみならず、複合検査機として多方面で活用しているX線検査機ですが、他の機械と同様に定期的な清掃、点検が必要です。時間の制約や人出が足りないなどの理由で取説書に書いてあるとおりにできないという方も多いと思います。
しかし、清掃は食品残渣や汚れによる細菌の繁殖を抑制する以外に、誤検出を引き起こす要因を排除し、機械の寿命を延ばすという効果があります。また、正しい定期点検も、誤検出の回避や機械の寿命以外に、長期的な検査性能の維持などの効果があります。ぜひ励行をお願いしたいと思います。
今回は、X線検査機で見逃しがちな清掃と点検について解説します。
【1】清掃を怠ると誤検出が起きる
未包装品、包装品に関わらず、搬送ベルトは長時間にわたり商品に直接触れるため、汚れが付着しやすい状況にあります。特に未包装品の場合、油分、血液、フライの衣カスなどが頻繁に落ちるので清掃をしっかり行いましょう。包装品でも、袋の表面にわずかに付着している粉、油、ソースなどが少しずつベルトに移っていくことがあります。
ベルトに付着した汚れでNG判定
汚れは時間の経過と共に徐々に搬送ベルトの表面だけでなく、裏面にも固着していき、Ⅹ線を吸収する物体になります。
例えば個食用の粉末スープは、商品自体の厚みが薄く、密度が低いため、X線の管電圧は低く設定されます。一般に管電圧が低い方が画像が鮮明に写るので、軟質系の異物が検出しやすくなります。そのためベルトに固着したスープの粉でも誤検出を起こします。ベルトに付着しただけの汚れは商品の中に混入した異物と違い、健康上のリスクはありませんが、検査機はそれをNG判定して、すぐ後ろに流れてくる正常な商品を排除することがあります(図1)。時間の経過とともに、塊となりベルトに固着した食品は、その影がⅩ線検査機の画面に現れます。ワークを載せないでコンベアを回すと、影が周期的に画面に出てくるので見つけやすいでしょう。ベルトの表だけでなく、ベルトを外して裏側も注意してチェックしてください。
図1:X線の透過画像
【2】清掃は機械の寿命を延ばす
X線の発生源の構造ですが、内部にあるX線管のフィラメントに高電圧をかけ、電子をターゲットに当て、X線を発生させます(図2)。その際、エネルギーの大部分が熱として放出されます。熱は周りの電気部品の劣化を起こすだけでなく、発生源自身の寿命も縮める原因になります。そのため、ファンで外気を取り込んで冷ましますが、ファンのフィルタ(スポンジ)が汚れると、外気の取り込みが弱くなり内部が高温になる、粉塵でプリント板のショートなどを起こすなどの原因になります。X線の発生源もプリント板も高額な部品なので、手間をいとわずに、汚れているのを見つけたら、フィルタを外して汚れを掃除機で吸い取ったり、水洗いをしましょう(図3、図4)。フィルタは高額な部品ではないので、定期的に交換するというルールを作ってもいいでしょう。

図2:X線発生源

図3:エアー吸い込み

図4:フィルタ(外して清掃)
【3】日常点検で異物事故を防ぐ
使用前、使用後の点検を手順どおりに実施することで、設置時と同じ検出感度を長期間維持できます。部品ごとに推奨する点検周期がありますので、お手元にある取扱説明書をご参照ください。生産由来の異物事故でリコールになるケースがメディアで時々報道されています。今回は、搬送ベルトとX線受光部の樹脂カバーについて注意すべき点をご紹介します。
① 搬送ベルトのほつれは異物になるかも
搬送ベルトの端部のほつれは経年劣化や、何かの原因で蛇行して筐体の金属部品と擦れたときに起こります。ほつれは検出感度に影響を与えるものではありませんが、それが脱落すれば異物になります。日常点検時にチェックして、ほつれた部分を切り取るか、新品のベルトと交換しましょう。
図5:端がほつれたベルト
② ラインセンサの樹脂カバーの劣化にも注意
このカバーは搬送ベルトを外さないと見えないところにありますが、割れや反りがないかを確認してください。劣化により破片が脱落すれば異物になります。また食品から出る水分や油分が隙間から侵入し、高額部品であるX線のラインセンサを破損させるおそれがありますので、目視と触診の両方でチェックしましょう。
図6:ラインセンサの樹脂カバー
【4】まとめ
今回は「X線検査機で見逃しがちな清掃と点検」をテーマに、誤検出と異物混入の回避についてお話ししました。清掃や点検する項目は他にもあります。いずれも検査性能の維持したり、機械の寿命を延ばすなどの効果があります。お手元の取扱説明書で、清掃や点検の手順や基準を今一度確認し、X線検査機を有効にご活用ください。
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