世界各国で使用される5G通信の周波数帯と運用形態
目次
5G通信の周波数帯、運用形態の分類
5G通信の本格的な導入を控え、各国で使用される周波数帯が徐々に明らかになってきていますが、その検討、決定されている周波数帯は大きく2つに分けられます。
1つは6および7 GHzまでの周波数帯で、3GPPでは410 MHz~7125 MHzで定義されている*1サブ6 GHz帯やサブ7 GHz帯(sub-6GHz、sub-7GHz)と呼ばれる帯域です。この周波数帯は従来LTE/LTE-Advancedや、Wi-Fiなどで使用されたり、近年拡張された周波数です。RF特性などにかかわる技術的課題を比較的限定しやすいのと、選択する周波数によっては3G(W-CDMA)や4G(LTE/LTE-Advanced)で使用されてきた検証済みのRF資産を流用できるなどのメリットがあります。デメリットとしては、既に利用が進んでいるため、まとまって広い周波数帯域を確保できないことなどがあります。
もう1つの帯域は30 GHz近辺から100 GHz程度*2までの周波数で、3GPPでは24250 MHz~52600 MHzが定義されており*1、ミリ波帯と呼ばれています。この周波数帯は利用があまり進んでいないため、広い周波数帯域を確保し、高速大容量化に対応しやすいというメリットがあります。デメリットとしては、大気中での減衰が大きく、移動体通信での使用実績に乏しいため、技術的にクリアしなければならない課題が多いことなどがあります。
また、運用形態も2つに分かれており、1つはノンスタンドアローン(non-standalone; NSA)という、5Gの新しい無線通信方式(New Radio; NR)とLTE/LTE-Advancedを組み合わせて使う運用方法で、もう1つはスタンドアローン(standalone; SA)という、5G NR単独で基地局と端末間の制御からデータ送受までを行う運用方法です。

図1:5G NRのNSAとSAのイメージ
*1:3GPP TS 38シリーズによる(2019年11月現在)
*2:一般的にミリ波という場合、波長が1 mm~10 mm、周波数が30 GHz~300 GHzの電波を指すが、現状の5G通信においては28 GHz帯など30 GHz以下の周波数も含まれ、上限はおおよそ100 GHzまでの帯域を対象としている。

各国で検討/決定されている周波数帯、運用形態
各国の事情により、5Gで使う周波数帯、運用形態には違いがあります。中国では、sub-6GHz帯でのスタンドアローン運用の計画が先行しています。これは、世界に先駆けて5G通信の商用化を行い、5G通信の3大特長*3のうち、特に従来の4Gでは難しかった超高信頼低遅延を実現することで、拡張現実(AR)など、さまざまな産業での5G通信利用に繋げていきたいという意図があると思われます。
そのほかの国ではさまざまな帯域、運用形態が検討されていますが、ミリ波帯をもちいたノンスタンドアローン運用の計画が先行しています。これは5G通信の3大特長のうち、主に高速大容量の実現の優先度が高く、アメリカでは固定ブロードバンド回線での利用、日本、韓国などは人口密集地域におけるデータスループットの改善の目的があると推測できます。
*3:高速大容量(Enhanced Mobile Broadband; eMBB)、超高信頼低遅延(Ultra-Reliable Low Latency Communication; URLLC)、多接続(Massive Machine Type Communication; mMTC)。参考:
5Gモバイルネットワークの高速化と低遅延化
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Sub-6GHz帯
600(n71)/700(n28)MHz,
2.5(n41)/3.5(n78)/4.5(n79)GHzなど |
ミリ波帯
28(n257)/39(n260)GHzなど |
スタンドアローン |
アメリカ、中国 |
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ノンスタンドアローン |
アメリカ、韓国、日本、ヨーロッパ |
アメリカ、韓国、日本 |
*:50音順、2018年9月現在
表1:世界主要地域別初期5Gサービス構成
アンリツの5G NR FR1(sub6)/FR2(ミリ波)測定ソリューション
アンリツは、各国で検討、決定されている5G通信の周波数帯や方式に合わせた、さまざまなソリューションを提供しています。5G NR FR1(sub6)/FR2(ミリ波)の測定はアンリツにお任せください。
5G NRチップセット、デバイスのRF/プロトコル性能をトータルに評価
ラジオ コミュニケーション テストステーション MT8000A
研究開発
アンリツのラジオ コミュニケーション テストステーション MT8000Aは、Band n41を含むサブ6 GHz帯からミリ波帯まで、RF試験とプロトコル試験を1台でサポートする5Gの疑似基地局機能を有した測定器です。RFコンバータやOTAチャンバと組み合わせ、世界各国で使用される5G通信の周波数帯に対応したチップセット、通信端末などの開発を強力に支援します。
MT8000Aに関する情報はこちら
3GPP準拠のRFコンフォーマンス試験
New Radio RF Conformance Test System ME7873NR
研究開発
品質保証
アンリツのNew Radio RF Conformance Test System ME7873NRは、3GPP規格に準拠した5G移動機のRF送受信性能、パフォーマンス性能、およびRRM性能のコンフォーマンス試験(RF Conformance Test; RFCT)プラットフォームです。3G(W-CDMA)、4G(LTE)時代に世界各国のお客様から選ばれ使用された確かな信頼と実績を元に、5Gにおいても引き続き対応テストケースをタイムリーにリリースしていきます。
ME7873NRに関する情報はこちら
3GPP準拠のプロトコルコンフォーマンス試験、事業者受入試験
5G NR Mobile Device Test Platform ME7834NR
研究開発
品質保証
アンリツの5G NR Mobile Device Test Platform ME7834NRは、複数の無線アクセス技術(Radio Access Technology; RAT)に対応した、モバイルデバイス向けの3GPP準拠プロトコルコンフォーマンス試験(Protocol Conformance Test; PCT)および事業者受入試験(Carrier Acceptance Test; CAT)テストプラットフォームです。OTAチャンバおよびRFコンバータと組み合わせて、sub-6GHzおよびミリ波を含む3GPPで規定された5G周波数帯域をカバーします。
ME7834NRに関する情報はこちら
5G NR FR1/FR2の信号解析、変調解析
スペクトラムアナライザ/シグナルアナライザ MS2850A
研究開発
品質保証
製造検査
アンリツのスペクトラムアナライザ/シグナルアナライザ MS2850Aは、最高44.5 GHzまでの周波数範囲、最大1 GHzの解析帯域幅、かつ優れた振幅・位相フラットネス性能を持つため、5G NRのsub-6GHz帯から28 GHz帯/39 GHz帯などのミリ波帯までの幅広いアプリケーションでお使いいただけます。解析帯域幅1 GHzにおいても広いダイナミックレンジ性能があるため、5G NR信号におけるより正確なEVM値を得ることができます。
MS2850Aに関する情報はこちら
5G NR FR1の信号解析、変調解析、信号発生
スペクトラムアナライザ/シグナルアナライザ MS2690A
研究開発
品質保証
製造検査
アンリツのスペクトラムアナライザ/シグナルアナライザ MS2690Aは、sub-6GHz帯の5G NRに対応したチップセット、通信モジュール、スマートフォン、無線装置の研究・開発・製造における送受信特性を評価できます。また、5G NRを使った新たなアプリケーションや基地局の研究・開発・製造にもお使いいただけます。最大125 MHzの広帯域FFT解析によるベクトルシグナルアナライザを実現し、さらに変調解析機能、ベクトル信号発生機能、BER測定機能も1台でサポートする、高性能、多機能なベンチトップのシグナルアナライザです。
MS2690Aに関する情報はこちら
5G NRデバイスの検査ラインに
ユニバーサルワイヤレステストセット MT8870A
製造検査
アンリツのユニバーサルワイヤレステストセット MT8870Aは、5G NR sub-6GHzに対応したスマートフォン、タブレット、通信モジュール、IoT端末などの大量生産製造ライン向け測定器です。最大で4個の送受信テストモジュールを搭載でき、5G NRはもとより、LTE、NB-IoT、Cat-M、V2X、WLAN、Bluetoothなどの通信方式の同時並列測定ができます。
MT8870Aに関する情報はこちら
5G NR向けパッシブデバイス評価
ベクトルネットワークアナライザ ShockLine™シリーズ
研究開発
アンリツのShockLine™シリーズは、小型、低価格でさまざまなラインナップを取りそろえたベクトルネットワークアナライザ(VNA)です。
5G通信での使用が検討されているミリ波帯向けコンポーネント、デバイスのSパラメータ測定、タイムドメイン解析ができます。
ShockLine™シリーズに関する情報はこちら