次世代モバイル通信“5G”サービスが始まろうとしています。5Gサービスは、高速通信、高信頼、低遅延、多数同時接続など、あらゆる利用者の要望やアプリケーションの要求条件に対応可能なサービスを目指しています。
ここでは、モバイルネットワークの進化の過程と要求される高速化や低遅延化について、どのような技術や測定が必要かを記載します。
5Gネットワークと新たなサービス
現在、主流の4Gネットワークは「高速通信」に取り組んできました。5Gネットワークではこれまでの進化の延長である「超高速」に加えて、「高信頼・低遅延」、「多数同時接続」による 新たなネットワーク要件に対応することが特長です。この特長により、5Gの導入は4K映像配信、センサービジネスに代表されるIoTの活用、自動運転などのサービス基盤になると期待されています。
「超高速」「高信頼・低遅延」「多数同時接続」を同一の通信ネットワークインフラストラクチャ上に実現するため、5Gでは無線インタフェースだけでなく、有線側のネットワーク、特にモバイルフロントホール(MFH: Mobile Front Haul)、モバイルバックホール(MBH: Mobile Back Haul)が一体となって大きく進化します。
- MFHインタフェースの変更:CPRIからeCPRIあるいはRoEに
- モバイルネットワーク(MFHとMBH)の片方向遅延時間が100μ秒以下に
- より高精度な時刻同期に
アンリツのネットワークマスタ プロ MT1000A(以下、MT1000A)は、4Gから5Gへ進化するモバイルネットワークを見据えた品質評価ソリューションを提供します。
モバイルフロントホール/モバイルバックホールの進化と課題
4Gモバイルネットワークの例
5Gモバイルネットワークの例
4Gモバイルネットワークから5Gモバイルネットワークへの進化には主に以下のポイントがあります。
- アンテナ部分(RRH)と信号処理部(BBU)間の通信がCPRIからeCPRI/RoEに替わります。
これまで、RRHとBBU間の通信はCPRIが使用されてきました。しかし、CPRIは実データ伝送効率が約6%となっており、ネットワークの高速化に対して取り組むべき課題の一つです。この課題を解決するため、RRHとBBUの機能分担と通信プロトコルの見直しが検討されています。機能分担についてはRRH側に変復調の機能の一部を持たせることで通信帯域を大きく抑えることが期待できます。また、通信プロトコルについてはEthernetをベースとしたeCPRIおよびRoEが検討されています。eCPRI/RoEはEthernetによる伝送効率の向上もさることながら、市場に多く流通している25GbEや100GbEなどの高速インタフェースが利用できるため、コストを抑えた基地局を提供できる一因になります。
- 「低遅延」を実現するため、ネットワークの遅延量の最小化が要求されています。
5Gモバイルネットワークでは「End-to-Endで1ミリ秒以内の遅延時間」が求められます。これは無線区間を含めた要求であり、有線区間、特に5Gモバイルネットワークで要求される遅延時間は片方向100μ秒程度となります。このため通信装置ベンダは、装置をネットワーク上で評価する場合、より高精度の遅延時間測定を行う必要があります。
- 時刻同期の重要性がこれまで以上に求められます。
これまで、基地局間の時刻同期にはGPSを用いた方法が一般的でしたが、GPS電波は建物や地下などには届かないため基地局の設置場所に制約があり、これを改善する目的で一部ではPTPを用いた時刻同期を導入しています。5Gでは設置場所に制限を受けないPTPで時刻同期を行うことを想定しているため、これまで以上にPTPは重要になります。
このように5Gモバイルネットワークは新たな技術を盛り込みながら4Gモバイルネットワークから進化していきます。ただ、これらの進化は突然すべて切り替わるわけではありません。これから構築するネットワークは、5Gを見据えた更新が重要となります。
アンリツの5Gモバイルネットワーク評価ソリューション
5GモバイルネットワークはスループットやBER試験に加えeCPRI/RoEや高精度な遅延時間測定および時刻同期の評価が必要となります。MT1000Aは、5Gモバイルネットワークの構築に必要な測定機能をサポートしています。
eCPRI/RoE測定
5GモバイルネットワークではCPRIに替わりeCPRIやRoEフレームが利用されることが想定されています。MT1000AはeCPRIもしくはRoEフレームを使用したBER測定による疎通試験および遅延時間測定ができます。
WDM回線を介して、BER測定や遅延時間測定ができます。
また、オプションをインストールすると25G eCPRI/RoEインタフェースを2ポート同時に測定できます。
高分解能のレイテンシ(遅延)測定
5Gモバイルネットワークでは片方向遅延が100μ秒以下に規定されています。また、実際のネットワークでは1kmの光ファイバを伝達するスピードが5μ秒程度必要なため、ネットワーク機器の遅延を最小限にする必要があります。
MT1000Aを2台用意することで、遠く離れた2点間の片方向遅延を測定できます。
さらにオプションを追加することで、5Gモバイルネットワークの要求規格を満足する高分解能、高精度な遅延測定ができます。
PTPを使用した時刻同期測定
5GモバイルネットワークではPTPを用いた時刻同期やSyncEを用いた周波数同期を行います。時刻同期の場合、グランドマスタクロック(GM)通して分配した時刻の誤差(Time Error)が許容範囲内に収まっているか否かを、ネットワーク全体として評価することが重要です。
MT1000Aは、高精度ルビジウム基準クロックを内蔵したGPSレシーバ MU100090Aを装着することで、これを基準とした時刻同期精度評価(Time Errorの測定)ができます。
- 基準の1pps信号に対して、測定対象1pps信号の位相誤差を測定できます。
- GPSからの時刻同期を使用することで、IEEE1588パケット内のタイムスタンプに基づく片方向遅延を測定できます。これにより、 ITU-T G.8273に規定されているTime Transfer Errorを測定できます。
