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光デバイス講座

はじめての赤外発光デバイス

近年の光通信網の飛躍的発展には構成部品である半導体レーザ、光ファイバ、およびファイバ増幅器など各構成部品の進歩が大きく貢献しています。中でも半導体レーザ、スーパールミネッセントダイオード、半導体光増幅器などを含む一連の赤外発光デバイスはシステムのキーパーツの1つになっています。

また光センシング分野でも既に広く使われている光ファイバジャイロ、眼科診断では欠かせないものになっている光断層撮影計(OCT)など、赤外発光デバイスは社会基盤に深く浸透しています。ここではこれら赤外発光デバイスの基本構成と対応波長、発光スペクトルの特長について解説します。


基本構造

赤外発光デバイスにはInP(インジウム・リン)またはGaAs(ガリウム・ヒ素)という化合物半導体からなる基板上に、数種類の化合物半導体を積層することで構成されています。特に発光領域は活性層と呼ばれ、構成する半導体材料の成分比と基板に使われる物質との組合せで発光波長が決定します。これまで数多くの構造が検討されてきましたが、今日一般的に使用されている断面構造は大別して次の2種類になります。基板上に活性層を含む複数の半導体を成長した後、活性層周辺を深く削り落としてから再度半導体材料で埋め込んだ埋込み構造と、活性層まで到達しないよう浅く削って電流が流れる領域を制限するリッジ構造です。波長や用途などにより使い分けられますが、通常はGaAsを基板とする0.8µm帯で発光するデバイスはリッジ構造が、InPを基板とする1.3~1.6µmの通信波長帯で発光するデバイスは埋込み構造とリッジ構造の両方が採用されています。

デバイスの断面構造の例
デバイスの断面構造の例

適用波長

光通信分野では信号品質の劣化や光ファイバの伝送損失がもっとも小さくなる波長が1.3µm、および1.55µm付近であることから信号光源用途ではこの波長が多く用いられるほか、光ファイバ増幅器の励起用に1.48µmの半導体レーザが採用されています。一方、センシング分野に使用される光源は測定分解能、対象となる物質の光吸収、散乱、さらに医用分野では水分吸収特性なども考慮して波長が決定されます。具体的には光ファイバジャイロ用では0.8µm帯、眼部光断層撮影用では0.8µm帯と1.06µm、皮膚用は1.3µm、血糖値測定用では1.6µmと使い分けられます。またガスセンシングの分野ではメタンでは1.65µm、アンモニア1.53µmなど気体の種類に応じてそれぞれ吸収線の波長が違うため、目的に応じた最適波長を用いる必要があります。

活性層材料に用いられる化合物半導体にはいくつかの候補がありますが、現在採用されているのは主に次の3種類です。GaAs基板上に積層したAlGaAsまたはInGaAsP活性層で、これは0.9µm以下の発光が、もう1つはInP基板上に積層したInGaAsP活性層で1.2µm以上の通信帯域で広く使われています。下記の表はこの材料系で得られる基本的な発光波長で、太線が実用化されている波長になります。極めて薄い複数の活性層を重ねる量子井戸構造を導入し、さらにその結晶に僅かな歪を入れることで発光波長を拡大させることも可能です。

結晶材料と発光波長

赤外発光デバイスのスペクトル特性の特長

(1)ファブリペローレーザ(LD)

一定の反射率Rを持つ2枚の鏡をある間隔を隔てて並行に設置すると、内部で光が繰り返し往復するために周期的な透過特性を持つ共振器を構成するようになります。このとき鏡の内部に利得を持つ媒質を置き、その利得を上げていくと共振器から出る光が増幅し、やがて発振に至ります。これがファブリペローレーザです。上述の基本構造を作り込んだ半導体ウエハを小さく切り出すことで作成できる最もシンプルなレーザで、発振波長は複数のモードからなる多峰性になります。光増幅器用の励起レーザに採用されているのはこの構造で、シングルモードファイバ出力で600mWを超える出力が得られます。ラマン増幅器用の励起レーザには、回折格子構造を内蔵したFBGファイバを用いることで発振波長帯域を狭くしたFBGレーザが使用されています。

ファブリペローレーザ
ファブリペローレーザ ファブリペローレーザ
FBGレーザ

(2)分布帰還型レーザ(DFB)

ファブリペローレーザでは波長純度が悪く、光通信用の信号源としては不適当なため、素子内部に特定の波長を選択する回折格子を内蔵することで単一モード発振を実現したレーザです。近年では変調器が集積されたデバイスも実用化されています。ガスの吸収線にレーザ光を照射することで離れた場所からガスを検知するガスセンサにも使用されています。

DFBレーザの構造
DFBレーザの構造

(3)スーパールミネッセントダイオード(SLD)

ファブリペローレーザでは端面での反射があるため、スペクトルに必ず周期的な共振モードがあります。逆にコーティングなどにより両端面の反射率を極力下げ、このモードを抑制することで媒質の利得波長帯域に応じた、広いスペクトルを発光させるようにしたデバイスがSLDです。高出力、広帯域、低コヒーレンス、およびシングルモードファイバとの高い結合効率を実現しています。光ファイバジャイロ、医用センシング用光源としてすでに幅広く利用されています。

SLDの構造
SLDの構造

(4)半導体光増幅器(SOA)、Gain-Chip

SOAは信号が乗った入力光を増幅するのが目的のデバイスで、SLD同様に素子端面の反射率を下げることで広帯域、高利得を実現できます。従って素子両端面でファイバ結合をする必要があることや、S/N比を悪化させる原因となる自ら発光する成分は極力抑える必要がある点でSLDとの違いがあります。光ファイバ増幅器ほどの利得は望めませんが、小型で低消費電力なうえ通信用波長であれば実用化が可能な波長自由度の高さが特徴です。光トランシーバ用の出力ブースター用としての使用例が急増しています。バリエーションとして片側の端面反射率を数%程度残し(LR)、波長フィルタや回折格子などを使って外部共振器を構成し、波長可変機能のあるレーザ光源を構成するGain-Chipとしても広く使われています。

SOAの構造
SOAの構造
波長可変光源の構成例
波長可変光源の構成例

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