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X線検査(エックス線検査)とは

X線検査とは、X線を被検査品に照射して得られる透過画像によって、目に見えない内部の状態を確認・評価する検査です。医療から食品・医薬品製造、化学・物理研究までさまざまな用途で用いられています。このページでは、X線の性質や、各種のX線検査の特徴を紹介します。

X線(エックス線)とは

X線(エックス線)は、電波や光と同じ電磁波の一種です。1895年にヴィルヘルム・レントゲンが発見したことから、「レントゲン」と呼ばれることもあります。

X線の波長は紫外線よりも波長が短く、1pmから10nm程度であり、金属や骨など密度が高い物質は透過せず、紙や皮膚など密度が低い物質は透過する性質を持ちます。場所によって透過したX線の強度に分布ができる(差ができる)ことを利用して、X線ラインセンサや蛍光増感紙などに写真のように像を写すことにより、物体や人体の内部を透視することができます。

可視光カメラでは撮影できない内部を透視できるX線は、さまざまな用途に活用されています。

  • 医療分野:X線(レントゲン)撮影やCT
  • 空港における手荷物検査
  • 食品・医薬品製造:生産ラインにおける混入異物検査、パッケージ内の製品検査、パッケージ不良の検査
  • 工業分野:アパレルにおける針や釘などの異物検査など
  • 非破壊検査(材料内部の亀裂や傷などの検査)
  • 化学・物理研究
レントゲンによるX線撮影写真
レントゲンによるX線撮影写真

食品製造におけるX線検査

近年、食品の品質に対する消費者の目がますます厳しくなっており、食品メーカーは製品への異物混入対策を厳格化しています。異物混入対策としては、金属もプラスチックなどの非金属も検出できるX線検査機によるインライン(生産ラインの中に組み込まれた状態)検査がスタンダードになっています。また、X線検査によって異物混入だけでなく数量や内容物の不足、形状不良、包装不良なども検査できるため、X線検査機の使用目的や用途の幅が広がっています。
インライン検査では、生産ラインの速度に応じたスピードでX線検査機が次々とX線画像を撮影し、異物などを判定します。

写真:生産ライン
食品工場と生産ライン
クッキーおよびソーセージのX線検査画像
クッキーおよびソーセージのX線検査画像

利用目的

  • 製品の品質管理
    1)社会的責任:不良品を消費者に渡さない。消費者の安全第一。
    2)社会的信用:ブランドイメージを創る・守る。
  • PL(製造物責任)法対策
    製造物の欠陥により、人の生命・身体または財産に関わる被害が生じた場合の製造業者などの損害賠償について定められた法律。
  • HACCP(ハサップ:危害分析重要管理点)対応
    食品原材料の生産から最終消費者の手に渡るまでの各段階で、発生するおそれのある危害について調査し、それらを防除するための監視を行う。食品の安全性・健全性および、品質を確保するための計画的な監視に役立つ。
  • 生産工程管理
    あらかじめ不良品を排除し、生産効率の低下を防ぐ。また、硬質異物混入による設備機械破損事故を防ぐ。

用途

  • 異物混入製品の流出防止
    1)金属、石、ガラス、樹脂などの異物混入製品を排除する。
    2)食肉や肉加工品への骨の残存を検査し、排除する。
  • 欠品製品の流出防止
    量目不足、個数不足、脱酸素剤の脱落、付属品の欠落などを検査し、欠品製品を排除する。製品規格検査としての運用。
  • 形状不良製品の流出防止
    内容物の割れや欠け、内容物への気泡入りなどの不良製品を排除する。品質検査としての運用。
  • 包装不良製品の流出防止
    包装シール部への内容物のかみこみ(噛み込み)を検査し、不良品を排除する。

食品製造におけるX線検査の活用例

  • 原材料の受入工程
    加工前の原材料の段階で混入異物を排除することにより、後工程における歩留まりを向上させます。また、加工後の製品に対するX線検査と併用することにより、異物混入製品の流出防止効果を高めます。
    大袋・大箱向け X線検査機 >
  • 充填・包装後の製品状態における検査工程
    充填・包装後の、消費者に提供される製品の状態でX線検査を行い、異物混入や内容物の欠品、形状不良、包装シール部へのかみこみ(噛み込み)などの不良製品を排除します。
    X線検査機 >
  • 出荷工程
    完成製品が出荷単位で集合梱包された状態でX線検査を行い、異物混入や欠品を検査します。
    大袋・大箱向け X線検査機 >

関連リンク:
X線検査機 >
ソリューションサーチ >
用語解説:X線検査機関連 >
異物検出技術セミナー >
ビデオ:X線検査機 >

医薬品製造におけるX線検査

医薬品や化粧品においても異物混入は発生しており、近年ではSNSによって短期間で大問題化しやすいこともあり、医薬品・化粧品メーカーはインライン検査や作業員教育などの混入対策を積極的に進めています。混入異物の種類としては、製品の原料由来の変成物や抽出物、プラスチック片、金属片などが多く、金属検出機だけでなくX線検査機による異物検査が必要とされています。

医薬品製造におけるX線検査の活用例

製造販売する最小の包装単位(調剤包装単位)の医薬品・化粧品に対し、X線でパッケージの内部を透視し、異物や形状、シール部への噛み込みなどを検査します。

  • 包装後の異物検査/形状検査/欠錠検査
    PTP包装機(ブリスター包装機)などで包装された錠剤やカプセル薬に、異物が混入していないか、割れや欠けがないか、欠錠がないかを検査します。
  • シール不良、かみこみ(噛み込み)検査
    シール包装後の経皮吸収型製剤や湿布薬、マスクなどが、シール部に噛み込んでいないかを検査します。

医薬品用(最大高さ: 50 mm)X線検査機 >

錠剤および経皮吸収型製剤のX線検査画像
錠剤および経皮吸収型製剤のX線検査画像

医薬品へのX線照射の影響

食品製造においてX線検査機が普及したのに比べて、医薬品・化粧品製造におけるX線検査機の普及はこれからです。その背景には、X線が医薬品(※)の品質に影響するのではないかとの憶測がありましたが、アンリツは名古屋市立大学と共同で医薬品の品質への影響を調査し、生産ラインで行われるX線検査であれば、品質に与える影響はないと確認しました。(Drug Development and Industrial Pharmacy 2015 41:953-958)
(※)調査した医薬品:NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)の錠剤3種類、アセトアミノフェロン(カロナール錠200)、ロキソプロフェン(ロキソニン60mg)、メフェナム錠(ポンタール錠250mg)

関連リンク:
医薬品向けソリューション >
医薬品技術セミナー >

各種のX線検査の特徴

医療分野におけるX線検査

医療分野におけるX線検査は、胸部X線や腹部X線、骨折診断などに用いられ、X線撮影装置で得られたX線写真を人間(医師)が目視で診断します。
人体の被ばく線量を抑えるために比較的強度の弱いX線を用いますが、強度の弱いX線から得られる透過画像はコントラストが弱いため、人間が目視しやすいX線写真に変換します。
医療用のX線検査では、医師が診断するのに適したX線写真を得るのが目的であり、写真の鮮明さなど人間が見るために必要な要素が重視されます。

手荷物検査におけるX線検査

手荷物検査におけるX線検査は、X線手荷物検査装置によって得られた荷物の透過画像を人間(検査官)が目視で診断し、武器や凶器、爆弾などの危険物、禁止品などを発見します。
アタッシュケースや金属外装製品など硬質な物質の内部を透視する必要があると同時に、麻薬や爆発物などの有機物も発見する必要があるため、X線の強度を強から弱まで設定できたり、後方散乱X線を併用するなどの工夫がなされており、金属と有機物、軽金属を色分けして表示する手荷物検査装置もあります。
手荷物検査では、検査官が危険物や禁止品を発見するのが目的であり、内容物の材質や輪郭を人間が見るために必要な要素が重視されます。